サント・モールのおもろいお祭り


・コンテスト当日の露店市

毎年6月の第一日曜日にロワール川流域のトゥーレーヌ地方の小さな町「サント・モール・ド・トゥーレーヌ」でシェーブルチーズのコンクールがあります。

今年は6月8日がその日で、町は朝から大賑わい。人口たった300人やそこらの町にこの日は3000人もの人が集まるのです。
この町の名前、チーズが好きな人ならきっと聞き覚えがあるはず。そう細長いバトン型をした有名なシェーブルチーズはこの町の名前と同じなのです。この地方はフランス一のシェーブルの産地で、その他クロタン、プリーニ・サンピエール、ヴァランセなども近隣で作られています。
それらシェーブル(フランスの他の地方のシェーブルも)の農家製のものがこの日この町に集められ、審査されナンバーワンが決まります。

私たちを連れて行ってくださった本間さんは数年前からこのコンクールの審査員をされているので、午前中は町の体育館(コンテストの審査会場)に缶詰です。お昼前になったら審査も一段落するので覗きにおいでと言ってくださったので、私たちは町中にでている露店を見て回ることに。

フランスの町や村は中心部分には幹線道路も鉄道も通っておらず、それらは町の外れを通っています。町の中心にさしかかる坂道の入口付近から、露店があるわあるわ。まるで日本の縁日のような感じ。露店にはコンテストに自家製のシェーブルを出した農家のオバサンがシェーブルを売っていたり、この地方のソーシーソン(ソーセージのようなサラミのような食べ物)を鉄板で焼いてパンに挟んで売っていたり、フランスの各地方からわざわざやってきてその土地の特産のチーズやワイン、フォアグラやコニャックを売っていたりとまるで食品見本市状態。かと思えば小型のトラクターや中古車の販売、特設の遊園地などもあり町中大人も子供も大騒ぎ。

チーズやワインを売っている露店では「味見」をさせてくれます。シェーブルを売っているオバサンはの真っ白いできたてもの、2〜3週間経ったもの、1ヵ月、2ヵ月…と様々な熟成状態のものを誇らしげに説明してくれました。
日本では同時にこんなに違った状態の物を食べる機会はなかなかないです。一番熟成期間の長いものは水分がすっかり抜けてカラカラ。見た目も黒ずんでいて決しておいしそうには見えません。日本でお店に並んでいたらきっと腐っていると苦情がでそうな程。(実際味も私はそんなに好きでなかった。)
各露店を味見味見で回っていたので(ありがたいことに、ひと目で旅行者とわかる私たちには誰も生ものや瓶のものを売ろうとはしなかった)、お昼前にはお腹のほうもほどよくいっぱいになり、審査会場を見学にいくことに。

・審査会場へ潜入

ただの体育館に机をたくさん並べクロスを敷いただけの特設の会場には、審査員の姿はもうまばらで、審査の終わった各テーブルにチーズが残されていました。
テーブルごとに一種類のチーズの審査をしていたらしく、あるテーブルにはクロタンがまたあるテーブルにはシェル・シュール・シェルが…という具合に残っていました。

本間さんが特別にお願いをしてくださっていたので、私たちもビジターの名札をもらって審査会場に入れてもらえました。
かたずけをしているオジサンに「食べても良い?」と聞くと、どうぞどうぞと許可されたので、あっちこちのテーブルの残っているチーズをまるで審査員が吟味しているかのごとく食べまくりました。(たぶん眉間にしわを寄せながら食べていたと思う)
生涯のうちであれほど沢山の種類と量のシェーブルを食べることはもうないでしょう。
それでも本場の状態の良いシェーブルを食べたせいでしょうか、ちっともお腹にもたれませんでした。(日本でちょっと多めにシェーブルを食べるとすぐに胸が悪くなってしまいます)
コンクールの結果発表と表彰式は夕方にお祭りの会場の真ん中の教会の前の広場にて行なわれました。これでこのお祭りが終わったわけではありません。このあと晩の9時からのソワレ(夜会)がクライマックスです。

関係者しかソワレには参加ができないのですが、特別に申し込みをしてもらっていたのでただのトラベラーの私の席もちゃんと用意されていました。
ソワレの会場は町役場。ここも特設のパーティー会場にその日だけ早変わり。日本のホテルの宴会場のような豪華さはないけれど、どこかしら素朴で温かいアットホームな感じがソワレが始まる前から漂います。

ソワレはシュバリエの任命の伝統的な儀式が最初にちょこっとあって、それから飲めや歌えやの大宴会。100人以上もの料理を村の有志が用意してサーブしてくれます。典型的なフランスの田舎の家庭料理。肉料理のソースはこの地方のワイン、シノンを使ったものでしたし、最後のデザートにはフレッシュなイチゴにシノンをガボガボかけて「ロワール地方のいちごの食べ方だ」と、教えられました。

私のテーブルはインターナショナルなテーブルでポーランド、フランス、ドイツ、そして日本と4ヶ国10人でした。いろんな国の言葉が飛び交いさっぱりわからないのですが、気分が高揚しているので身振り手振り大げさなジェスチャーで何とか意思の疎通はできました。とかく若くみられがちな日本人、私はティーンエイジャーと思われたらしく2才になる娘がいるというととても驚かれてしまった…。5つくらい若くみられるのは嬉しいけれど、ここまで子供に見られるとちょっと屈辱。

このソワレは一晩中続くとか…。私たちは12時には失礼しました。




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