「フランスチーズの故郷を巡る旅」というのは、何処もかしこも超マイナーな土地ばかりを訪ねる旅でした。
チーズに興味を持ち出してからフランス料理、ワインとフランスの食に関するものにも意識的にアプローチをし始めました。そして今回、日本ではおそらくなかなか出会うことのできないフランスの田舎の郷土料理を味わうということも楽しみにしていました。
とは言ってもたった12日間の短い旅、ほんの上っ面しかカスっていませんが、それでも私にとってはなかなか興味深い料理との出会いでした。
まずロワール地方。
ここの特産といえばシェーブルチーズにロワールワイン。(あと古城)
とにかくロワールの代表的な赤ワイン「シノン」を使った「シノンソース」の料理が多かったです。
豚の内臓の詰め物(ソーシーソン)をこのシノンソースで煮込んである一品は、いかにも田舎料理といった泥臭いお料理でした。フランスには各地にそれぞれ特徴のあるソーシーソンが存在しているそうで、それを食べ歩くのも面白いかもしれません。
イチゴにシノンをひたひたにかけてデザートとしていただきました。イチゴも日本のものと違って素朴な酸っぱさがあり、そこに甘い砂糖やミルクでなくてこの土地のワインをかけて食べるのにはビックリしました。
サラダはもちろん「シェーブルサラダ」をたのみました。パリでも同じようなサラダを食べましたが、どちらも分厚めに切ったシェーブルをどういうわけかはんぺんの様に「ふわっ」と焼きあげていました。その後自宅でも何度も試しているのですが「ふわっ」とは焼けません。謎です。
それからブルゴーニュ地方。
ここもワインで大有名なところ。
ワインのメッカ、ボーヌで食べた「ブッフ・ブルギニヨン」。これは聞くところのよるとただ煮込むだけの超手抜き料理だとか。牛肉がかなり柔らかく煮込まれていて、ワインの酸味も効いてて美味しかったです。簡単ならば家でもワインに合う一品ということで作ってみたいです。
それからなんといってもエスカルゴ。エスカルゴってブルゴーニュ地方の名産だそうです。知らなかった…。でっかいのが一皿に6個くらいのっかって出てきました。味付けが濃いので全部平らげるのは少しきつかった!
ポーチドエッグを赤ワインで煮込んだ料理「オウフ・ア・アラ・ブルギニーノ」は今までに見たことも聞いたことも、そして想像したこともない料理でビックリしました。赤ワインで煮込んだというよりは赤ワインのスープ状のものの中に、ポーチドエッグがひとつふたつ入っているという感じなのですが赤ワインのスープ状のもの自体が酸っぱいようなそうでもないような頼り無い味で、おいしいとは言い難かったです。
デザートでメレンゲを固く泡立てて絶壁のようにそびえ立たせたところに飴をかけたお菓子がでました。見た目もすごいインパクトなのですが、このメレンゲ恐ろしく甘くて日本人の舌には辛いものがありました。このデザート、リヨン郊外のポール・ボキューズに行ったときにもデザートワゴンで運ばれてきましたが、甘さを想像してたのみませんでした。
ブルゴーニュ地方はワインの他にも牛肉(シャロレイ牛)の産地だそうで、あちらこちらで白い牛の放牧を目にしました。残念ながらこの牛肉を使ったお料理を食べる機会がなかったのですが、フランスで好まれる牛肉とはどんなものなのかとても興味があります。日本のように霜降りがやはり人気なのでしょうか?
サヴォワ地方は標高の高い土地です。
冬は雪に閉ざされてしまうため保存できる食品が昔から作られています。
保存食にもなるチーズ作りが特に盛んで、セミハードタイプ、ハードタイプのチーズで有名なものがたくさんあります。そして生ハムやサラミのようなソーセージ。どのレストランに行ってもまず前菜に生ハムがどど〜んと登場しました。
チーズを使った料理もたくさんありました。私たちは夏だというのにチーズ料理の代表選手である「サヴォワ風フォンデュ」をいただきました。よく日本で紹介されているフォンデュのレシピにはグリュイエールチーズやエメンタールチーズを使っているのですが、サヴォワ風〜になるとボーフォール、コンテなどを使っているとのことでした。(要は使っているチーズがスイス風なのかフランス風なのかということでしょうか)
それから「タルトフィレット」。この料理はルブロションを贅沢に使ったポテトのグラタンとでも言いましょうか…。上品な味で羽二重餅のように柔らかいルブロション。そのまま食べてもうっとりするようなおいしいチーズを料理に使うなんてなんて豪華なんでしょう!!たいがいチーズを加熱して柔らかくするとまた違った味わいでおいしいものですが、この料理のおいしさったら筆舌に尽くし難いです。
最後に回ったのがリヨン。
リヨンはフランス第二の都市で「食の都」とも言われているそうです。
レストランのメニューには「リヨン風サラダ」とか「○○のリヨン風」とやたらリヨン風と付いているものが多かったです。「リヨン風サラダ」にはチコリ、ポーチドエッグ、ソテーしたベーコンがサラダの具として必ず入っているそうですが、何故これがリヨン風なのか突っ込んだ所は解明できませんでした。
それから魚や鶏をすり身にしてそれを団子状にした「クネル」というものにも初めて出会いました。特別おいしいってものでもないのですが、いわいる練り物を洋風のソースでいただくのと和食のようにしょうが醤油でいただくのとでは私はしょうが醤油に軍配があがるかなー。
あと「ソーシーソン」。ロワール地方でも食べた大型ソーセージはリヨンでも名物料理のひとつ。内臓肉ではなく粗引きの豚肉をピスタッチオとかトリュフなどを混ぜているソーセージ。内臓ではないので比較的食べやすいものでした。
もちろん各地でそれぞれの土地のチーズもいただきました。
やはり現地で同じ地方のワインとその土地の空気の中で食べるとチーズのおいしさも最大に引き出されるものですね。
ひとついただけなかったのは、サヴォワの小さな村のレストランで出されたチーズプラトーに熟成しすぎて岩のようになった「トム・ド・サヴォワ」がありました。お店の人曰く、「この土地の人はこれくらい強烈に熟成したものを最も好みます」とのこと。興味も手伝って早速賞味してみましたが、表面は化石のようで固く味もピリッと舌を刺す辛味が強くて一口でもうゴメンナサイでした。通(ツウ)への道はまだまだ遠い。