旅行の楽しみはなんていっても朝ごはん。
普段から朝ごはんには力をかけているので、特別旅行だから朝ごはんを張り切って食べるというわけではありませんが、海外旅行のときはそのお国柄を朝ごはんでも楽しむのが好きなのです。
イギリスの朝ごはんはかりっと焼きあげたトーストにオレンジマーマレード。そしてシリアルと焼きトマトの添えられた卵料理。
アメリカではベーグルにクリームチーズを挟んで。とまぁ、こんな具合に旅から帰ってきてもしばらく自分の家でも続けたりするのです。

フランスの朝はパリパリのクロワッサンとカフェオレ。
これを現地で食べることをどんなに楽しみにしていたことか！！
パリでは4つ星のホテル「アンバサダー」に泊まりました。朝食はよくあるバイキング式のものでパンもクロワッサンをはじめブリオッシュ、バゲット、デニッシュなど種類が豊富に並べられていました。喜び勇んでお皿にとったクロワッサン。……ん？パリパリ感がまるでないぞ！！ 普通クロワッサンってもっと香ばしいよね。……友人とも顔を見合わせてなんだかちょっと違うな…と。勝手な想像だけれど、4つ星くらいのホテルだったらきっとホテルメイドの焼き立てのパンがでてくるにちがいないと思っていただけに、なんだか「ヤ○○キパン」のような大量生産チックなクロワッサンが朝食にでてくるなんて少しショックでした。

以前パリに旅行をした友人が「パリでの朝食はホテルのダイニングなんかで取らずに街のパン屋さんの焼き立てのパンと、マルシェ（市場）で果物やハムなんかを買ってお部屋で食べた方がずっと美味しいしお得よ！」と話していたことを思い出しました。
「日本のパン屋と違ってパリのパン屋はどこも当たりでハズレがない。」と言っていた人もいました。
これらの言葉を信じて、今までに味わったことのないほど美味なるパンをお腹いっぱい食べることを夢見ていた私は見事に裏切られた思いです。

9月号のダンチュウに「最近のフランスのバゲットは工場製の大量生産される安いバゲットが主流になり、美味しいバゲットがなくなってしまった。」みたいなことが書かれていました。クロワッサンに関しても、スーパーで袋の10個も入ったような工場大量生産品を週末にまとめ買いをしていく人が多いそうです。そうか。フランスでも日本の「ヤ○○キパン」に匹敵するようなパンが出回っていたんだ。それも高級ホテルの朝食にも並んでしまうくらい、高い普及率を誇っているんだ……。と自分の体験してきたことに納得してしまうのでした。

また雑誌のその記事には「手作りでパンを焼いているパン屋さん達が手作りパンの地位の復活を求めてデモを起こし、政府は‘パン屋’の看板を掲げられる基準を定めるようになり、手作りパンの伝統を守るパン職人が保護されることになった」と記載されています。
そう言えば店先に「月夜のパン職人」を型どったマークのをつけているパン屋さんをちらほら見かけました。聞けばこのマークはパン職人の組合のマークということで、パン職人としての誇りの印なのでしょう。

フランスに限らず、良いパン屋さん、美味しいパン屋さんは材料や製法にこだわって日々切磋琢磨されていると思います。そのためどうしても工場製のものに比べて値段が高くなってしまいます。よっぽど景気が良くない限り安価なパンが売れてしまうのも仕方ありませんが、食の国フランスでどんどんおいしいパンがマイナーになっていってしまうのは残念なことです。

パリでこんな具合だから地方の小さな村のホテルはとても期待できそうにありません。
ところが、意外や意外にも田舎のこじんまりとした清潔なホテルほど朝食のパンやヨーグルトが美味しいのです！！
ブルゴーニュ地方のSEMUR-EN-AUXOIS（ソミュール・アン・オークシス？）というほんとに小さな村にあるホテルは、こじんまりとして内装や設備は決して豪華ではないのですが、朝ごはんはとっても美味しかった！！クロワッサンはパリパリでマーガリンのベタッとした香りでなくフレッシュバターの香りがしました。前日の夜は25時くらいまでディナーをいただいていたので食欲はそれほどなかったのですが、このクロワッサンとミルクたくさんのカフェオレで至福の朝食をいただくことができました。

私が思い描いていたようなフランスの朝ごはんは、滞在中毎日とはいきませんでしたが何度か体験することが出来ました。
「フランスのパンはすべて美味しい」というのは間違いと知りましたが、「フランスの誇り高きパン職人は時代の波に飲まれないで、おいしいパンを作り続けている」ということも知りました。
今度旅するときはパン職人のマークの着いているパン屋のパンをいろいろと食べてみたいものです。