産地 | フランス、ロワール地方 |
原料 | 山羊乳 |
乳脂肪分 | 45% |
形状 | 直径約4〜5cm、長さ約17cm、重さ250g |
タイプ | シェーブルタイプ |
季節 | 春〜秋 |
プロフィール | バトンの形がユニークなシェーブルチーズ。ロワール河流域の町「サントモール・ド・トゥーレーヌ」の周辺の村や町で作られていて、この町では毎年6月にシェーブルチーズの品評会&お祭りが開催される。 サントモール・ド・トゥーレーヌは(他のシェーブルも)普通のチーズ作りより乳酸菌の量が多いため、ゆっくりとカードを固めてそして柔らかく酸味の多いチーズに仕上がる。その酸味を中和するために灰(アルカリ性)をまぶすともいわれている。(あとは水分量を調節するためとも。) 若いうちチーズは真っ白で柔らかく崩れやすい。そのため中に麦わらが一本通してある。ミルクの甘みと共に乳酸菌の酸味が感じられる。熟成が進むと水分が抜け、だんだんチーズも縮み固くなってくる。そうなると酸味よりコクが増し、色もアイボリーに変わってくる。 |
食べた感想 | ロワール河の流域はシェーブルチーズの産地です。何故この地方に山羊が多いかというと8世紀にアフリカ、スペインを通ってサラセン人(アラブ人)が遠征してきたときに、軍隊と共に山羊を食糧として連れてきて、撤退した後も山羊とチーズ作りの文化をおいていったためと言われています。 シェーブルの中でもこのチーズが一番印象的な形なので、初心者を対象とするチーズセミナーでは必ず私は取り上げます。するとまず皆さん、黒い灰がまぶしてあることに驚き、チーズの中心に麦わらが通してあるのにも驚かれます。だってチーズを包むのに麦わらを使用しているのではなく、チーズの中に入っているって日本人の持つチーズのイメージにはないですもの。確かにチーズを食べ慣れない方にとって山羊の乳で作っているというだけでも珍しい食べ物であるから、初心者にとってはスペシャルに珍しい食べ物に感じられるようです。 さて私は数年前にこのチーズの名前の由来の町にシェーブルチーズの品評会とお祭りを見に訪ねたことがあります。町の広場中に屋台や露店が建ち並び、チーズ屋さんやパン屋さん、八百屋やワインのブースやドライフルーツ屋さん、挙げ句の果てにはトラクターのディーラーなどなど農業に関わるものすべての見本市会場になっていました。 チーズ屋さんも何軒もあるのですが、やはりシェーブルのお祭りなのでロワール地方で作られる様々なシェーブルの種類が、そしていろんな熟成の段階のシェーブルが並んでいるのには驚きました。サントモール・ド・トゥーレーヌだけでも出来て2日のもの、1週間のもの、3週間のもの、1ヶ月のもの、2ヶ月のもの・・・と熟成別に並んでいるのを見ると、シェーブルってこういうふうに熟成して行くんだ・・・と実によく解りました。2ヶ月も熟成すると黒い灰もグレーっぽく変色して、水分が抜けてチーズのサイズも2回りくらい小さくなってしまっています。触ってみるとその違いがよくわかるのですが、若いチーズは柔らかいのに2ヶ月ものはカチカチにかたくて、釘とかも打てそうな固さ。こんな固いチーズを地元の人は本当に食べるのだろうか・・・と疑ってしまうほど、見た目も汚らしい様子でした。 実際に食べてみると熟成したものは若いシェーブルにはない噛みしめれば噛みしめるほど味わい深い旨み(そう、アミノ酸の旨み)が詰まっています。それもどことなく山羊臭い(ややエグミのある)旨みなのです。チーズだけを食べているとわりと辛いので、赤ワインを合わせてみると不思議と旨みがワインに溶け合ってエグミも感じなくなってしまいます。 若いサントモールはふんわりと柔らかく、ほのかに日本酒のような酒粕のような香りが漂っています。そして味の特徴はやはり酸味でしょうか。刺すような酸味というよりはヨーグルトの酸味を柔らかくしたような味です。チーズを口に含んでいるときにはそれほど感じない山羊乳のけもの臭さというものは、のみこんだ後にほんのちょっとだけ上がってくる感じです。ナチュラルチーズをそれほど食べ慣れていない人にとっては山羊のけもの臭い感じより、チーズが酸っぱいということが耐えられないという声をよく聞きます。なるほど、チーズはコクとか甘みがあるものだと思っている人にとっては酸味はカルチャーショックなのでしょうね。でもこの酸味もロワールの辛口の白ワインと合わせると不思議と消え去ってしまうので、マリアージュというものは面白いものです。 |
合うワイン | 熟成の若いチーズには辛口の白ワイン。ロワール河流域のミュスカデ、ヴーヴレ、トゥーレーヌなどを。熟成の進んだコクのあるチーズにはややフルーティーな赤ワインを。できればロワール河流域で作られる赤ワイン、ブルグイユやシノンを。 |
合うパン | バゲット、パン・ド・カンパーニュ(田舎風のパン)。塩のついていないクラッカー。 |
チーズの型。先が若干狭まっているバトン型。(全形)