産地 | スペイン、バスク地方 |
原料 | 羊乳 |
乳脂肪分 | 45〜50% |
形状 | 直径10〜30B、高さ8〜12B、重さ500g〜3.5Kg |
タイプ | ハードタイプ |
季節 | 一年中 |
プロフィール | フランスと国境を接するピレネー山脈のスペイン側は「バスク地方」で古くから作られてきているチーズ。山岳地帯のチーズ作りはどこも一緒で、春から夏にかけて麓の村から山の放牧場で羊を放し飼いにして、人間も一緒に山小屋生活をする。そこで毎日チーズ作りをして秋になり草が無くなったら麓に家畜と戻ってくる。山の上での生活で作ったチーズを麓の町(村?)の市場で売っていたということだ。 燻製をしているので表面は薄オレンジ色でスモーキーな香りが強い。熟成を3ヶ月以上させるが外皮はそれほど分厚くない。チーズの中は小さな気孔がたくさんあり締まっている。しなりがあまりなく口の中に入れるとぽろりとくずれるように小さくなる。 味はやや塩味が強めではあるが、羊乳特有の濃厚な風味と酸味や辛味など刺激的な感覚も多少感じられる。スモーキーフレーバーが強いので全体的には食べやすいチーズという印象になっている。 |
食べた感想 | スペインのチーズは最近ではポピュラーになりつつある(ひょっとしたら一部の熱狂的なチーズファンに限ってのことかもしれないけれど)ので、百貨店クラスでもスペインで最も代表的なチーズ「マンチェゴ」はよく見かけるようになったし、チーズ専門店では「イディアサバル」を扱っていることが多くなってきているように思います。 スペインといえばやはり羊乳のチーズ。19世紀まで羊毛産業が盛んだったので羊の頭数がとても多いそうです。スペインの羊毛産業が廃れてしまってからというものは、その羊のミルクを利用する産業に切り替わったそうです。南フランス、中、南部イタリア、そしてスペイン・ポルトガルは羊のチーズがポピュラーでその種類も多いのですが、羊は牛や山羊に比べると1頭あたりのミルクの産出量が圧倒的に少ないそうです。しかし成分的にはタンパク質や脂質の含有量が多く、チーズにすると非常に濃厚でコクのあるチーズになります。 イディアサバルはスペインのバスク地方の最も有名なチーズ。ひとくちに「バスク地方」とはピレネー山脈をはさんだフランス側も含んで「バスク地方」と呼ばれていて、今は国が違うけれど当然のことながら同じ民族、同じ文化を持った人々が生活しています。彼らはスペイン国民、フランス国民というよりは「バスク人」として誇りを持ち続けているそうです。 このバスクの人々はアルプスの人々のように山脈の麓の村で生活の基盤を持ちますが、夏になると羊を連れて山に上がり、高原に咲く美味しい草花や牧草を餌にする「移動放牧」を行っています。人間も夏の間は山小屋でチーズ作りに励みます。フランスではAOCチーズのオッソー・イラティなどが、スペインではイディアサバルなどが同じような環境のもと作られているのです。 羊乳の圧搾タイプ(セミハード)のチーズは、山羊乳のチーズにしばしば感じられるような動物臭があまりありません。固形成分が多いため味の密度の高い濃厚な味に仕上がっていて、それがとてもまろやかで食べやすく感じます。イディアサバルもそんな味の奥行きの深いバランスの良いチーズですが、よくよく味わってみると深いコクの中に酸味や辛味が存在しています。ただ単にまろやかなチーズというのではなくて、どこかパンチの効いたような力強い味のチーズ。 特に伝統的に作られるイディアサバルは燻製を施しているものが多いので、香ばしいスモーキーフレーバーがこのチーズの一番印象的なところでしょう。そのお陰で、チーズを食べ慣れていない人でもおつまみのスモークチーズと同じ感覚で食べることができます。普通のスモークチーズと違うところは、チーズの食感がムチっとしていなくてボロっとしているところ。そんな食感が田舎っぽい素朴さを感じる要素になっています。 合わせる飲み物はワインならあまり上等でない力強い赤ワインとか意外とモルトウイスキーでも合うかもしれません。 |
合うワイン | 赤ワインなら南仏やスペインのミディアムからフルボディのものを。イメージとしてはマディランやフィトウなど(南仏でもラングドック・ルーション地方とか西南地方のもの)。 |
合うパン | パン・ド・カンパーニュ。 |