エポワス
Epoisses
産地フランス、ブルゴーニュ地方
原料牛乳
乳脂肪分50%
形状直径9.5〜11.5cm、高さ3〜4.5cm、重さ250〜350gのタイプが通常日本に輸入されている大きさ。その他にも直径16.5〜19cmと大きい物もある。
タイプウオッシュタイプ
季節1年中
プロフィールブルゴーニュ地方にあるエポワス村から名前がついた。
16世紀の初めにシトー派の修道院で作られ始めたとされているが定かではない。この修道院が当時のブルゴーニュ地方では一番大きかったエポワス城下にでき(今でもその僧院あとは残っている)、17世紀頃には近隣の農家にも作り方が広まり、18世紀にはブルゴーニュ一体に広がった。19世紀の資料にはパリやリヨンの大都市にも流通されていたという記述が残っている。
ブリアサヴァランは「チーズの王者」と褒めたたえ、ナポレオンはシャンベルタンとあわせて好んで食していたと言われている。しかし第一次世界大戦、第二次世界大戦を経た1950年代にはたった2軒の農家でしか生産されていなかった。
1956年、絶滅寸前のエポワスをこの地方で生まれ育ったベルトー氏がただ自分が再び食べたいが為に、伝統を受け継いで復活させた。1991年にAOCに認定され、今現在ではブルゴーニュ以外の地域でも作られている。(ほとんど工場製)
独特の匂いは熟成中に水、またはマール(地元の地酒)を混ぜてチーズを洗うことによって熟成に不必要なカビなどを取り除く作業を行なううちにだんだん強くなってくる。約5週間で出荷され、あとはチーズショップなどで上手に熟成をさせ、うまくいけばスプーンですくえるくらいトロトロのチーズになる。
食べた感想ウオッシュタイプの中ではひょっとしたら最も有名(?)なエポワスは最近映画の中でも登場したので、ますます人気上昇中だとか…?
この6月にエポワス村のベルトー社というエポワスのチーズ生産工場を見学しました。無殺菌乳を使用して一つ一つ人の手で型に入れられ、水、またはマールという地酒を含んだ水で丁寧に洗われて、約5週間で出荷される過程を見ました。工場とはいってもすべて機械まかせでなく人間の力、自然に存在する微生物の力も最大限に活用して、あの薄オレンジ色の匂いの非常にきつい、芳醇なミルクの味のするチーズを誕生させていました。
あのブルゴーニュの片田舎の村で誕生したチーズのうちひとつがはるばる海を渡って、我が家の食卓にやってきたのかと思うと、「ようこそはるばるいらっしゃいました。」と言いながら食べないと申し訳ないような気がします。
うちにやってきたエポワスは中心まだ熟成しきっていなくて芯が残っていました。しかし常温に置いておくとすぐにふちの熟成が進んでいるところが流れ出し、芯の部分も流れないまでも柔らかくなり、まるで溶けかけたアイスクリームのようになりました。
外皮はオレンジ色でいかにも微生物が繁殖していますといった感じにベトベトに湿っていて(写真ではツヤツヤに写っている)、匂いも強烈です。こんなに臭い匂いに反して、刺激が全くない甘いミルクの柔らかい味が口のなかを漂います。柔らかい味といってもコクは感じられ、食べごたえは十分。腰のある赤ワインとあわせると、口の中でチーズとワインのどちらも甘さが増して(旨味が増すのかも…)、これぞマリアージュといった感じが楽しめました。 エポワスは熟成がかなり進んでも苦みがあまりでないように思います。(他のウオッシュタイプではしばしば苦い感じになっていることがある)それは牛乳の質なのか作り方によるものなのかわからないのですが、「チーズの王者」の名にふさわしい品位のある熟成の仕方だと思います。
合うワイン大雑把に言ってフルボディーの赤ワイン。私の好みではやはり同じ地方ということでブルゴーニュの赤、ジュヴィレイ・シャンベルタンとかポマールなどを合わせたり、ボルドーの赤ワイン全般(若いものからある程度年数のたったものまで)なら、何でもOKなのではないかと思います。
合うパンバゲット、カンパーニュ。レーズンやクルミの入っているパンなども。


中に芯があるのにまわりはすごくトロトロで流れ出しています。

 


yuko@yuko-cheese.net : Send Mail

矢印 「ゆうこ・チーズ・NET」トップページへ