今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
トーマ・デル・トリフラウ |
イタリア北西部のピエモンテ州で造られています。 ピエモンテ州の東と北はアルプス山脈に囲まれて、牛乳製の固い大きなチーズが生産されています。そしてピエモンテの南部にはワインの産地としても名高い「ランゲ丘陵」が広がっています。 小高い丘がいくつも連なったこの地域では山羊、羊、牛などを飼育している小規模な農家(ときにはブドウ栽培などと兼業しています)が小さなチーズを生産しています。 この小さなチーズのことを「トーマ」とこの地方では総称して呼んでいます。 小さな農家がそれぞれのレシピで(そのときどきに搾乳できる乳種を混合しています)トーマを造るので、いろんな種類のトーマが存在しています。 そして「トーマ・デル・トリフラウ」はそんな中でもちょっとリッチに「トリュフ」を刻んで入れているトーマになります。トリフラウとは「トリュフを採る人」ということ。 ミルクは牛乳と山羊乳の混乳で、うっすらと白いカビ(カビではなくて酵母なのかもしれません)をまとっています。そしてアイボリー色のチーズの中には黒い刻んだトリュフが点々と入っています。 カットをすると強烈ではなくフッとトリュフのあの香りがしてきます。あくまでもチーズの甘みを消し去ってしまわない程度のバランスの取れた量です。 ランゲ丘陵はバローロやバルバレスコといったイタリアでも銘醸ワインのカテゴリーに入る人気ワインの産地ではありますが、実に素朴な田舎です。トーマも本来は素朴で何気ない普段使いのチーズのはずなのに、トリュフが入ることでぐんとグレードアップをしています。 やはり合わせるワインもそれ相当の赤ワインを用意したいですね。バローロでももちろんいいのですが、イタリアのもう一つの銘醸地として名高いトスカーナの赤ワインとも合わないわけがありません。 クリーミーなチーズの甘さと魅惑的なトリュフの香りがしっかりとしたタンニンをまろやかにして、そしてなめし革のような香りにマッチすることでしょう。 またワインに合わせるだけではなく、マッシュポテトの中にチーズを小さくカットして混ぜ合わせてみれば、一風変わったポテトサラダなんかになるのではないでしょうか。 |
モンターズィオ |
イタリアの北部はアルプス山脈が横たわり、西からフランス→スイス、東はオーストリア→クロアチアに接しています。それら北部地域では昔から伝統的にハードタイプのチーズが作られてきました。これらのチーズを総称して「山のチーズ」とも呼んだりします。 山岳地帯は夏には自生の良質な牧草があり、冬は雪に閉ざされてしまうため夏に取れたミルクでチーズを作り冬の保存食として大きく固いチーズを作っていました。 モンターズィオもオーストリア国境付近の山岳地帯で13世紀という古い時代から製造が始まっていたそうです。 チーズは数ヶ月の熟成を経て食卓に上るのですが、日本に入ってきているものは日本人が好むこともあり熟成期間が1年くらいのもので、かなりミルクの中のタンパク質がアミノ酸に変化して、旨み成分に変わっているチーズだそうです。 確かに食べてみると味の濃さやコクが素晴らしいです。あっさり味というよりはしっかりと味の調ったチーズでゆっくりと噛みしめて食べたい・・・という感じです。 このチーズが作られるオーストリア国境付近のフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州はワインもフランスやドイツの品種のものをたくさん作っています。今回はトカイ・フリウラーノ種というこの地方土着ブドウ品種から造るのワインをご紹介していますが、きっと日本人が知っている陽気で明るいラテン系のイタリアというワインではなくフレッシュで清々しいきれいなワインでしょう。 同じ土地のチーズとワインとして合わせてみるときれいなハーモニーが生まれそうです。 チーズの味もしっとりと落ち着きのある奥深い味わいです。 |
ペコリーノ・トスカーノ |
「ペコリーノ」とはイタリアの羊乳で作るチーズのこと。 イタリアの中部や南部は牛よりも羊の飼育がさかんでチーズも羊乳のチーズが大半です。「ペコリーノ・○○」と○○のところに土地の名前が入り、「ペコリーノ・トスカーノ」もトスカーナ地方の羊のチーズという意味になります。 イタリアの最古のチーズは「ペコリーノ・ロマーノ」でこちらはローマの羊のチーズということになります。 羊の乳は牛や山羊の乳に比べてたんぱく質や脂肪分が多く含まれているため、濃厚で芳醇なチーズを産み出します。羊は牛に比べると体も小さくまたミルクを搾乳できる期間も短いのですが、牛ほど広大な牧草地を必要としないので丘陵地で起伏の激しいトスカーナ地方のようなところでの飼育がさかんです。 イタリアのチーズはフランスのチーズに比べて見た目が朴訥としていて田舎臭い・・・なんて言われています。ペコリーノチーズは見た目も味もちょっぴり野暮ったいかも。カットした表面も何となくざらついていてなめらかさがありませんし、室温においておくとだんだんじんわりと汗(油分が浮き出る)をかいたようになってきます。 20日ほど熟成させたものから市場にでますが、それくらいのものはまだ色も白っぽくフレッシュな甘みがあります。今回お届けするものは4ヶ月ほど熟成をさせてもので、たまご色っぽい黄色で、フレッシュな甘みではなく奥行きのあるチーズらしい甘い旨みによるコクがあります。濃厚な羊乳からまったりとした味を想像しますが、しつこくない優しい素朴なハードタイプのチーズです。 もっともっと熟成をさせるとチーズも固くなり、旨みももっと凝縮して濃くなるそうですが、4ヶ月くらいのものが一番食べやすくてワインにも合いやすいように思います。 イタリアの各地にある「ペコリーノ」チーズですが、それぞれに味わいが違っています。塩辛いもの、田舎っぽい素朴な味わいのあるもの、ひねたような味があるもの・・・などなどですが、中でもペコリーノ・トスカーノが一番洗練されているかもしれません。 どうせならば同郷のサンジョヴェーゼ種主体の赤ワインとマリアージュさせてみたいものです。(ちなみに今回のAとCのワインはバッチリの相性だと思います。)
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