今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
モテ・シュル・フォイユ |
フランス、ポワトー地方の山羊乳で造るチーズです。 ポワトー地方は昔から山羊乳製のチーズを造っている、フランスでも有数のシェーブルチーズの産地です。 山羊は牛に比べると体が小さく乳量も少ないことや、乳のタンパク質の構造などから柔らかくサイズの小さなチーズになることが多いです。ポワトー地方のいろいろなシェーブルチーズはすべて手のひらに乗るくらいのサイズです。 モテ・シュル・フォイユは200g前後の円盤型をしたチーズを栗の葉っぱでくるんでいます。 栗の葉でチーズを巻く理由としては水分が多くしっとりとしたチーズの水分を程よく吸い取り、熟成の最初の段階で蒸れてしまうことを防ぎ、またある程度熟成が進んできてもチーズがカチカチにならないように保護しているとのこと。 熟成の初期の段階はチーズはヨーグルトのような酸味が強く感じられ、フレッシュな印象があります。 しっとりとした組織で塩味も穏やかに感じるため、クラッカーなどにのせてフルーツのジャムや蜂蜜をトッピングすると山羊乳の風味が押さえられてデザート感覚で美味しく食べることが出来ます。 ワインもフルーティーで爽やかな白ワインに良く合います。 熟成が徐々に進んでくるとチーズはだんだん締まってきます。 水分が抜けてくると塩味がしっかりとついてきて、酸味は穏やかに感じるようになります。そしてミルクの風味が凝縮してチーズらしい味の密度が増してきます。 チーズを口に入れてじっくり味わうとミルクの甘みや旨みがしっかりと感じられ、余韻も長く続きます。こんな状態になったら白ワインも少しコクのあるものやフルーティーな赤ワインなどと良く合うようになります。 そして更に熟成が進むとチーズは一回りも二回りも小さく固くなり、表面はすっかり乾きチーズの色がアイボリーに変化します。まわりには白や青のカビが現れ風味を造ります。このカビは食べても害は有りませんのでご安心ください。 チーズはほっくりとした感触で不思議な旨みと複雑な味わいがいつまでも口の中に広がります。 シェーブルチーズの味の醍醐味、という感じでしょうか。 ワインはタンニンの少なめのボディのしっかりとした赤ワインに合うようになってきます。 このように、どんな段階でもそれぞれに美味しいのがシェーブルチーズの特徴です。 今回はどんな熟成段階のものが届くか楽しみです。 |
アルスア・ウジョワ |
スペインは北西に位置するガリシア地方で作っている牛乳製のチーズです。 降水量が多く緑豊かなガリシア地方では牛の飼育が盛んです。豊かな魚介類とともに、乳製品もこの地方ならではの特産品で、牛乳の甘みが強く出ているチーズが数多く生産されています。 今回ご紹介するアルスア・ウジョアは丸みを帯びた平べったいお供え餅のような形と大きさをしています。地元では製造後1週間ぐらいから数週間後の柔らかいものを食べたり、数ヶ月熟成させて固くまた味に深みを持たせた物を食べたり、といろんなタイプを楽しむようです。 しかしこのチーズの真骨頂は「優しいミルクの甘さ」だと思います。口に入れるとほんの少しだけ酸味が感じられ、その後に甘いミルクキャンディーのような風味と良質のバターのニュアンスがあります。懐かしいお母さんの味とでも言うのでしょうか…。だれが食べても安心する味わいです。 チーズはムッチリとしていて包丁やナイフでチーズをカットするとカット面が刃にくっついてしまうくらいの柔らかさ。まるでちょうど良く熟成をした白カビタイプのチーズのようですが、このチーズには白カビが生えていませんから、よりミルクの味わいをダイレクトに感じることができますしタンパク質が熟れたような感じはありません。 湿度と気温が高くなるこれからのシーズンでも、無理なく食べていただけるマイルドなチーズです。 |
ペコリーノ・トスカーノ・オーロアンディコ |
「ペコリーノ」とはイタリアの羊乳で作るチーズのこと。 イタリアの中部や南部は牛よりも羊の飼育がさかんでチーズも羊乳のチーズが大半です。「ペコリーノ・○○」と○○のところに土地の名前が入り、「ペコリーノ・トスカーノ」もトスカーナ地方の羊のチーズという意味になります。 イタリアの最古のチーズは「ペコリーノ・ロマーノ」でこちらはローマの羊のチーズということになります。 羊の乳は牛や山羊の乳に比べてたんぱく質や脂肪分が多く含まれているため、濃厚で芳醇なチーズを産み出します。羊は牛に比べると体も小さくまたミルクを搾乳できる期間も短いのですが、牛ほど広大な牧草地を必要としないので丘陵地で起伏の激しいトスカーナ地方のようなところでの飼育がさかんです。 イタリアのチーズはフランスのチーズに比べて見た目が朴訥としていて田舎臭い・・・なんて言われています。ペコリーノチーズは見た目も味もちょっぴり野暮ったいかも。カットした表面も何となくざらついていてなめらかさがありませんし、室温においておくとだんだんじんわりと汗(油分が浮き出る)をかいたようになってきます。 20日ほど熟成させたものから市場にでますが、それくらいのものはまだ色も白っぽくフレッシュな甘みがあります。今回お届けするものは6ヶ月以上熟成させたもの。フレッシュな甘みはすでに旨みにと変化して深い味わいとコクが詰まっています。 イタリアの各地にある「ペコリーノ」チーズですが、それぞれに味わいが違っています。塩辛いもの、田舎っぽい素朴な味わいのあるもの、ひねたような味があるもの・・・などなどですが、中でもペコリーノ・トスカーノが一番洗練されているかもしれません。 長期熟成させたペコリーノチーズでもペコリーノ・トスカーノなら変なクセが少なく、上質な赤ワインに良く合います。 どうせならば同郷のサンジョヴェーゼ種主体の赤ワインとマリアージュさせてみたいものです。(今回のCのワイン、キャンティならピッタリです!)
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