今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
ブリー・ド・モー |
チーズのまわりを白カビが覆っている「白かびタイプ」と呼ばれるチーズです。 「かび」が回りに付いているものを食べるなんて・・・と、日本人にはちょっと取っつきにくい感覚はあるのですが、この「かび」は人体には無害のものです。 この白カビをチーズのまわりにつけることによって、カビがチーズのタンパク質を分解する微生物の活動を助け、おいしさ作りに参加します(これを熟成とよびます)。ですからご心配なく。 カマンベールと同じくらい有名(?)なブリーですが、「ブリー・ド・モー」の「モー」というのは町の名前。「モー」のブリーチーズということです。ブリーチーズ(ブリー地区で作られてきたチーズの総称)で有名なものが3種類あり、それらをまとめて「ブリー3兄弟」とあだ名が付いています。 柔らかいタイプのチーズとしては大きめのサイズで直径が36センチもあり、ブリー3兄弟の中では「長男」格のチーズです。 ブリー・ド・モーが「チーズの王様」と呼ばれる理由は・・・ それは1814から1815年に行われたウィーン会議でフランスの外交官のタレーランが長引く会議の余興として、ヨーロッパ各地のチーズを持ち寄り、その中からナンバーワンのチーズを決めようというイベントを企画します。そしてそのなかでみごとこのブリー・ド・モーがナンバーワンに選ばれました。その時から名実ともにこのチーズが「王様」ということになったのです。 さすがに「チーズの王様」と言われるだけあり、味はエレガントで非常にまとまっています。 食べやすいのですが通をもうならせる奥の深さがあり、その完成度は見事なばかり!! 赤ワインならフルーティーなものからボディーのしっかりした強いタイプ、そして熟成して繊細な味わいになったものまで、みごとにカバーしてくれます。そっと寄り添う上品な女性・・・。それが私のイメージです。 一つの大きさが直径36センチもあり、放射状に細くカットしてお届けします。切り口をピッタリとラップもしくはアルミホイルなどで止めてください。(ショップからは専用の保護プラスティックでガードされてきます) まずはチーズを一口。十分においしさを堪能したらワインを一口。きっとその繰り返しをやめられなくなってしまうでしょう・・・。 |
ゴーダ・ミレニアム |
ゴーダはオランダで最も生産量が多く、世界的にも知名度の高いチーズです。 日本にもおそらく江戸時代に鎖国しているときに長崎の出島を出入りしていたオランダの商船がこのチーズを持ち込んだと思われます。長崎の大名、そして江戸の将軍様はその頃に食べていたのかもしれません。 明治時代になって西洋風の文化が定着しだした頃、国産のチーズも造られるようになります。その時にゴーダチーズの製法を模倣したチーズが造られて、日本人にその味わいをいち早く知られるところとなったのもゴーダチーズだと言われています。 今でも国産プロセスチーズの原材料となるチーズはゴーダタイプのチーズです。 さて私たちの味覚にも非常に馴染みのあるゴーダは、熟成1ヶ月頃からたべることができます。 熟成が若いものは圧搾タイプとはいえ、水分量が多くしっとりとしています。味わいは淡泊でサンドウィッチなどの具材として気軽に食べられる、デイリーユースのチーズとして広く市場にも出回っています。 熟成が6ヶ月、12ヵ月、18ヶ月、24ヶ月・・・と進んでくると、チーズの水分量が減りタンパク質も微生物によって分解されるのでアミノ酸系の旨みもグンと増してきます。 特にニューヨークやパリなどの大都会では長期熟成したゴーダチーズはプレミアムなチーズとして食通の間では人気が高いようです。チーズの色はアイボリー色ではなく、茶色がかったような黄色に変化し、5年物にもなると味噌のような濃い色に変化します。 今回お届けする「ゴーダ・ミレニアム」は1000日以上の熟成をしているので、色は茶系の黄色、チーズは水分が抜け固く、ナイフを入れると砕けるようにカットされます。 そしてお味はとても乳製品の味とは思えないような、味噌っぽい旨みの塊になっています。 ワインのお伴はもちろん、日本酒、焼酎、そして日本茶と合わせても良いでしょう。食後だけでなく、お汁粉の後の塩昆布のようにあんこのお菓子とともに食べてもらうのも、ちょっと洒落ています。 |
ブルー・デ・コース |
けっこう風味の強いブルーチーズです。 世界3大ブルーチーズのひとつでもあるあの有名なロックフォールの産地と限りなく近い地方で作られています。 両チーズともこの地方にある自然にできた石灰岩の洞窟で数ヶ月熟成をします。この洞窟はブルーチーズには最適な熟成条件を兼ね備えているので、おいしいチーズを作るのには必要不可欠なものです。これらのチーズはこの地方の洞窟で熟成をさせないといけないという法律まであるくらいですから。 ロックフォールが羊乳で作るのにたいしてブルー・デ・コースは牛乳で作ります。牛乳は無殺菌乳で脱脂をしない、いわゆる「全乳」でつくられるため、他の牛乳製のチーズより(例えばクラブでもかつてご紹介をしたフルムダンベールやブルー・ド・オーヴェルニュなど)甘みや濃厚さが若干多く感じられるでしょう。 フレッシュタイプのチーズ以外は食べる前30分から1時間前には冷蔵庫から出して、室温に戻しておくことが鉄則です。それはワインと同じで冷やすと独特の香りや味わいが閉じてしまって美味しさが半減してしまうからです。 しかし全乳で作られるチーズというのは脂肪分を全く取り除いていないわけですから脂肪分が高いです。ですから室温においておくとすぐに柔らかくなってしまいます。暑い夏場はあまり長いこと(2時間も3時間も)室温に置いておくことはオススメできません。 ロックフォール同様、かなりピリッとした風味も強いし塩辛さも相当なもの。渋みの強い(タンニンの多い)赤ワインと合わせて楽しみましょう。赤ワインの渋みと合わさるとチーズもワインも驚くほど甘みを感じることができます。もちろん甘口のワインとの相性も驚くほど良いです。暑い夏には冷たく冷やしたデザートワイン(甘口ワイン)とブルー・デ・コースをチビチビとやるのもちょっと素敵です。 ワインがダメ・・とおっしゃるかたにはハチミツをチーズに添えて召し上がってみてください。辛みや塩辛さが甘さと混じり合うと角が取れて、何とも不思議なハーモニーを奏で始めます。 そのまま食べるのがとてもつらいようでしたら、サラダのトッピングやオムレツに少量混ぜてとお料理のワンポイントに使ってみてください。熱を加えると風味も和らぎ、またそのまま食べるよりは他の材料と混ぜてしまうことにより塩分や風味もかなり薄まります。ちょっとブルーチーズ風味があるだけでも、いつもの卵焼きが洋風に変わりワインのつまみにもなるかもしれません。
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