今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
カベクー・フォイユ |
外見は「柏餅」のようなチーズ。
南仏のケルシー地方は石灰岩の台地が続いています。そこでは山羊の飼育が盛んで昔からたくさんの山羊のチーズが存在していました。そのケルシー地方では「カベクー」というのは「小さな山羊のチーズ」という意味を持ちます。 土地の名前が付いたいろいろな「カベクー」がある中、このチーズは葉っぱ(フォイユ)で巻いているのでこの名が付きました。「葉っぱで巻いたカベクー」というわけ。簡単ですね。 チーズ自体はひとつが40g程度の小さなメダル状になっています。この地方のシェーブルチーズはサイズは小さいのですが濃厚なミルクの旨みが感じられます。そしてハーブのような爽やかな香りも伝わります。きっと山羊たちが食べている草が良いのでしょうね。 巻いている葉っぱはプラタナスの葉、とか栗の葉です。 葉っぱで巻くことの意義としては、葉の成分であるカテキンが殺菌効果を発揮することや、チーズを乾燥から守りしっとりと保っているということなどが挙げられます。香りがある葉で巻くとほんのりとその香りもチーズに移り楽しいものです。 カベクー・フォイユはさらにチーズの表面に粗く挽いた黒コショウが少し施されています。黒コショウはかなりピリッと刺激的ですが結構良いアクセントになります。 小さなチーズですしスパイシーですので食後よりは食前にキリッと冷えた白ワイン、発泡酒、シェリーなどと合わせて見ては如何でしょうか。暑い暑い夏の日に清涼感と供に食欲も湧いてくるはず。 |
アルスア・ウジョア |
スペインは北西に位置するガリシア地方で作っている牛乳製のチーズです。 降水量が多く緑豊かなガリシア地方では牛の飼育が盛んです。豊かな魚介類とともに、乳製品もこの地方ならではの特産品で、牛乳の甘みが強く出ているチーズが数多く生産されています。 今回ご紹介するアルスア・ウジョアは丸みを帯びた平べったいお供え餅のような形と大きさをしています。地元では製造後1週間ぐらいから数週間後の柔らかいものを食べたり、数ヶ月熟成させて固くまた味に深みを持たせた物を食べたり、といろんなタイプを楽しむようです。 しかしこのチーズの真骨頂は「優しいミルクの甘さ」だと思います。口に入れるとほんの少しだけ酸味が感じられ、その後に甘いミルクキャンディーのような風味と良質のバターのニュアンスがあります。懐かしいお母さんの味とでも言うのでしょうか…。だれが食べても安心する味わいです。 チーズはムッチリとしていて包丁やナイフでチーズをカットするとカット面が刃にくっついてしまうくらいの柔らかさ。まるでちょうど良く熟成をした白カビタイプのチーズのようですが、このチーズには白カビが生えていませんから、よりミルクの味わいをダイレクトに感じることができますしタンパク質が熟れたような感じはありません。 湿度と気温が高くなるこれからのシーズンでも、無理なく食べていただけるマイルドなチーズです。 |
ガプロン |
出版されているチーズの本などでは「白カビタイプ」に分類されるこのチーズですが、カマンベールのような典型的な白カビのチーズに比べるとぜんぜん違う、とても個性的なチーズです。何が個性的って、チーズの中にニンニク、胡椒がはいっていて、白カビタイプのようななめらかさは全くありません。 ニンニクやハーブ、胡椒の入ったチーズはフレッシュタイプなんかにもよくあります。そういったチーズは比較的歴史の新しいチーズなのですが、このガプロンは昔からフランスのオーヴェルニュ地方という山深い土地で、バターを作った後の脂肪分の少ないミルクを利用して作った伝統的なチーズです。 普通のチーズよりは乳脂肪分が少ないタイプのチーズなのですが、コクのなさをスパイシーさがカバーしているような気がします。こういったニンニクなどを混ぜ込んだフレーバーが豊かなチーズというものは、普段チーズを食べ慣れていない人でも「クセがなくて美味しい」と思えるものです。 ムチっとした食感、そしてぴりりと刺激的な味わい。 こういったスパイシーなチーズは、ワインよりもビールのほうが美味しいかもしれません。
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