今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
カンタル |
フランスの中央部にある「中央山塊(オーベルニュ)」という山の中で古くから(約2000年も前)造られているチーズです。形はちょうど昔の鏡台のイスのような人が座るのにぴったりなサイズの円筒形の形です。 日本ではお世辞にもメジャーなチーズというイメージはないのですが、本国のフランスでは生産量も多くわりと広く知られている(全国区)のチーズだそうです。 チーズはセミハードタイプと日本では分類されているためやや水分の多めの固いチーズなのですが、作り方がイギリスのチェダーチーズと同じような製法をするため、チェダーチーズと同様に組織はボロッとくずれやすく、塩分もやや強く感じるのが特徴です。 山深いオーベルニュの素朴なチーズという氏素性そのものの風貌です。 素朴な味わいながらも2000年も受け継がれてきたチーズ。食べてみるとじんわりと旨みがひろがり、またナッツのような香ばしい味わいもしています。たまに青カビが入り込むことがあります(外皮の切れ目からはいるのか、もともとチーズの中に青カビの胞子が存在していたのかわかりませんが)。 日本でなら「カビが入っている」とクレームが来てしまいそうなものですが、フランスでは味わいが豊かになると「ラッキー」扱いをされるとか。 素朴で派手さがまるでないチーズだからこそ喜ばれるハプニングなのでしょう。 「カンタル」には夏の間だけ生産される「サレール」と少し産地が南寄りになる「ライオール」と同じような姿形のチーズがあります。(味わいもほとんど同じ) どのチーズもAOC(フランスの原産地呼称統制)を持っている由緒正しきチーズ達ですが、カンタルがその中でもいちばん生産量も多く、親分といえるでしょう。 熟成が進むと鰹節のような匂いとか乾物屋さんの匂い(微生物がたくさん働いている匂い?)がしてきます。今回のカンタルは「アントル・ドゥ」といわれる6ヶ月ほど熟成させたもの。そうなるとチーズもグッと旨みが増して食べたあとの余韻が長い素晴らしいチーズになっていきます。 |
ルエル |
南仏といってもプロヴァンスではなくミディ・ピレネー圏の山の中で造られているシェーブルタイプのチーズです。フランスでもスペインに近いほうといえばなんとなくイメージしてもらえるでしょうか。 都会に住んでいたご夫婦が街を捨て田舎で農業をしようと選んだ土地がこの地だったとのこと。最初は山羊を数頭飼って細々と酪農業を始めたとか。 20年近く経ち山羊の頭数も増え、彼らの造るチーズの評判も高くなったこともあり今ではずいぶん規模が大きな酪農に変わったそうです。でも絞りたてのミルクを使ったチーズ製造、いわゆる農家製(フェルミエ製)のスタイルは変えず、季節感のある自然なチーズ造りをしています。 このルエルはかわいらしいドーナツ型のチーズ。シェーブルタイプのチーズはユニークなカタチの物が多いけれどこのチーズも目をひきます。チーズには黒い灰がまぶされたものと、何もまぶさない白い物の2種類がありますが、どちらも熟成が進むに連れまわりに白っぽいカビや青っぽいカビが生えてくるのでグレーっぽいちょっと濁った様な色合いに変化します。 チーズの中身は真っ白でギュッと密度のある南仏独特のシェーブルの組織です。熟成が若いうちはしっとりとして酸味もありきめ細やかなテクスチャーが口の中で溶けるように広がりますが、熟成が進むとやや水分が抜けて一回り小さな感じになり、また少し固く締まってきます。白カビの繁殖が多い物に関しては外皮の近くから内部に向かって柔らかくクリーム状に熟成している場合もあります。 そのような状態になると更に味わいはしっかりしコクが増し複雑になってきます。余韻も長くなります。 合わせるワインも熟成状態によって変えると良いでしょう。若いものにはサッパリとした白ワイン。出来れば南仏(ローヌあたり)のカジュアルな白ワインと。そして熟成が進んだものにはフルーティーな赤ワイン。ラングドックの果実味の豊かなワインと合わせてみてください。 |
ブルー・デュ・ヴェルコール・サスナージュ |
長ったらしいこの名前、しばしば「ブルー・ド・サスナージュ」と省略して呼ばれたりします。 真ん中に入っている「ベルコール」とは、このチーズの故郷のローヌアルプ地方にある「ベルコール山塊」の地名から来ています。この地方はアルプスの山もありますが、ベルコール山塊などアルプス山脈からは少し離れているところにも山地があり、アルプスの山のチーズ同様に冬の保存食として伝統的に作られてきました。 しかしながらブルー・ド・サスナージュは年々生産農家が減り絶滅寸前まで追い込まれました。ここ10年でこのチーズを復活させようと若い生産者が立ち上がり、見事復活を遂げAOCにも認定されました。 ブルーチーズとしてはちょっと固めでむっちりとしたセミハードタイプのようなチーズです。そして塩分や脂肪分も若干普通のブルーチーズに比べると少ないので、とても食べやすくてブルーチーズであることを忘れてしまいそうなくらいです。 ピリッとした舌を刺すような刺激がすくなく、食べた後にちょっとほろ苦さを感じ、ともすればクルミのようなナッティーな風味も味わえる限りなくセミハードに近いタイプのチーズです。 このまま食べてもおいしいのですが、チーズを細かく砕き生クリームで少しゆるめたペーストを、薄切りのバゲット(あるいは食パンでも)にのせてオーブントースターで軽く温めると、何とも風味豊かなカナッペができあがります。 生で食べるより、美味しいかも?! 生で、そして是非火も通して違った2種類の味わいをお楽しみください。
|