今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
ルー・ペノル |
フランスとスペインの国境には「ピレネー山脈」があります。この山岳地帯から北東に広がる高原地方では昔から牧畜をして乳を利用したチーズ造りが盛んです。特に有名なのは羊乳を用いたブルビタイプのチーズ。しかし、羊だけではなく、牛、山羊のミルクからもたくさんのチーズが造られています。 このルー・ペノルは山羊のミルクで造ったチーズ。つまりシェーブルタイプのチーズです。フランスのシェーブルタイプのチーズといえば、手のひらに乗るくらいの小さなものからせいぜい250g程度の小さなサイズのものが多いのですが、このチーズはひとつが2キロくらいと比較的大きめのチーズです。 名前はチーズの産地の街の名前である「ペンヌ・ダジュネ」より「ペンヌの住民」という意味を持っています。この地方の村々はフランスでも「最も美しい村」と言われていて、酪農やぶどう栽培、豊かな食文化が残っている地域とされています。このチーズを造っている農家ももともとは大都会から農家の憧れて移り住んできた人たちです。 まわりはやや堅めのごわっとした外皮でおおわれていますが、熟成が若いものは真っ白でしっとりときめ細かい組織の中身を持っています。このころのものは酸味がありさっぱりとしつつ素直なミルクの旨みを感じられます。 この状態から熟成が進むにつれ、水分が徐々に抜けて組織が締まってきます。そして味わいも酸味が抜けて代わりにチーズらしいコクが増してきます。 チーズの熟成がどのような状態でも、その状態ごとに合うワインがあります。若いものにはサッパリとした白ワインやフルーティな赤ワインを。そしてコクのある熟成がすすんだものには渋めの赤ワインなどが良く合うでしょう。 |
ロッコロ |
このチーズの故郷は北イタリアのロンバルディア地方(州都がミラノ)の山の中。 山深いこの地方では四季を通じて昔から様々なチーズが作られていました。夏になると牛たちを麓の村から山に放牧しに出かけます。山にある放牧地には香りの良い草や美味しい花が自生しているから、それらの草花を食べた牛から絞ったミルクは栄養価が高く、チーズにすると風味の濃い美味しいチーズができあがるのです。 さてこのチーズは夏の放牧した牛のミルクから作ったチーズではなく、放牧に牛たちを出す前の5月に麓の村の家に残る家族が夏の間に食べるためにまとめて大きめに作られたチーズ「サルヴァ」というチーズと同じように作られています。つまり、ご自宅用のチーズということ。そういうチーズですのでひとつが2キロ程度で熟成期間も数ヶ月と短め、見た目は朴訥とした飾りっ気のないチーズ。 熟成中表面は数度洗うためフランス風に言うならば「ウオッシュタイプ」とも言えますが、チーズの表面はややべたつきながらもいろんな色のカビが生え、チーズの中は外皮に近い部分は少し柔らかく熟成(トロトロではありません)し複雑でコクのある味に変化していますが、中心部はまだボロッとしている組織で酸味も感じられます。 良い意味で田舎っぽい素朴な味わいです。これぞ山の日常使いのチーズ。こういうチーズが昔から各家庭に常備され、貴重なタンパク源として日々大切に食べられていたのでしょう。 食べるときの注意として、このチーズの外皮(皮の部分)は食べてもちっとも美味しくないので是非切り落としてください。 ワインとの相性ですが、チーズそのものがそれほど個性的な強さを持っていないので、優しい赤ワインとかコクのある白ワインが合うのではないでしょうか。白ワインはもちろん辛口で! |
ミラベラ |
ウオッシュタイプのチーズとはチーズを熟成させる段階で塩水や地酒などで洗いながら雑菌を排除し、またチーズの熟成に役に立つ菌を植え付けて作業です。洗うことによりリネンス菌という納豆菌の仲間のような菌の発生を促し、その菌がチーズのタンパク質を美味しく変化させていくのです。 そのときにリネンス菌がくさやのような納豆よりももっと強烈な匂いを発し、チーズの表面もベトベトとしめっているので初めての人にとってはちょっと敬遠したい気にさせてしまいます。 しかし食べてみてビックリ、あの見た目や匂いに似合わずチーズ自体は非常にマイルドで食べやすいものなのです。(熟成が進みすぎると塩辛くなりすぎますが) さすがにどっしりとした重量感があるだけあり味のほうもどっしりとしています。山羊特有の酸味が感じられず、濃厚なクリームから作ったチーズかと間違うくらいぎゅうっと味が詰まっています。山羊のチーズってこんなに味わい深いものだったの!と初めて食べたときにはとても感動をしたのを覚えています。 ウオッシュタイプのチーズは中世の時代にフランスの修道院で作られ発達したのですが、中部から北部のフランスに様々なウオッシュタイプのチーズが今でも存在しています。 このミラベラはロレーヌ地方(シャンパーニュ地方とアルザス地方の間に位置する)で作られている四角いウオッシュタイプ。ロレーヌ地方特産のミラベルという黄色い酸っぱいプラムから作る蒸留酒で表面を洗って熟成させます。パッケージにはミラベルの絵がのっています。 かなりベタつく表面ですが食べるとほのかに甘酸っぱい味が最後のほうでかんじられます。チーズ自体は匂いに反して優しいミルクの味のマイルドな味わい。赤ワイン全般にとても良く合います。しかし、あまり長い間冷蔵庫などで保管をしていると、徐々に苦みが出てくるのでなるべく早く美味しいうちに食べきることをオススメします。
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