今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
ラングル |
ウオッシュタイプとは熟成過程でチーズの表面を塩水、または地酒(マール、葡萄の絞りかすを蒸留して作ったお酒)で洗うので、このような呼び方をします。 何故チーズを洗うのか?これは中世の昔、自給自足をしていた修道院ではワインやチーズなども日常的に作られていたのですが、冷蔵庫などのない昔のこと、チーズの保存性を高めるためにチーズのまわりに付くカビとか細菌を消毒するために編み出された方法だそうです。チーズに不要な細菌類を洗い流し、リネンス菌という納豆菌の親戚のような菌が繁殖することにより、ネバネバとして匂いも古漬けのように刺激的な匂いがするようになります。 このラングルもシャンパーニュ地方にあった修道院で作られるようになったチーズ。約200gほどの小さな円錐型のチーズの上部にはフォンテーヌ(泉)といわれるくぼみがあるのが特徴。残念ながら今回お届けのチーズは半分にカットしてしまうため、完全なくぼみは見ることが出来ませんが、地元ではこのくぼみにシャンパーニュや地酒を注いで飲んだりするとか?! 熟成の若いうちはそれほど匂いも強くなく、チーズの形自体もしっかりと原形を保っていますが、熟成していくにつれ匂いが強くなり、表面もテカテカ、ヌルヌル、ネバネバとかなりしっとりした感じになり、チーズも非常に柔らかく流れ出すようになります。それくらいの状態になると味も強く、しっかり腰のある赤ワインでないとなかなか太刀打ちが出来なくなります。 しかしながら匂いや見た目の強烈な感じより、チーズの中身は意外とマイルドで食べやすいというのもウオッシュタイプの特徴。外側の部分を取り去ってしまえば、実は非常に食べやすくて美味しい!と、以前ご紹介したウオッシュタイプのチーズの感想として寄せられました。 そして熟成の若いチーズはミルクの甘さ、そして嫌味のないチーズの旨さが楽しめます。ワインもシャンパーニュはもちろん、辛口の白ワインからフルーティーなミディアムボディの赤ワインでも十分楽しめるでしょう。 ウオッシュタイプはまだ未経験・・・というかたに、ぜひ試していただいてみたいチーズです。 |
コンテ(16ヶ月) |
コンテは、フランスではグラタンなどのチーズを使ったお料理に欠かせない料理用のチーズとして、またワインとともに楽しむ食卓用のチーズとして万能選手のチーズです。 ひとつが50Lちかくもある大きなチーズで、チーズの歴史も2000年近くあると言われています。 ハードタイプのチーズは、保存性を良くするためにチーズ中の水分をかなり少なくした熟成期間も長いチーズ(今回のものは16カ月以上熟成しています)。 このコンテの故郷もアルプスの山中でスイスとの国境付近です。冬の保存食として夏にアルプスの山中に放牧した牛からとったミルクで作られてきました。 よく食べ慣れているプロセスチーズと比べると旨みとともに甘みや苦みなども感じられますが、そこがナチュラルチーズとプロセスチーズの違いで、チーズの味わいが複雑です。味が単一な感じがしません。 単一なのは味ばかりではありません。匂いを嗅いでみてください。何とチーズの芳しい香りがすることか!時にはチーズを数ヶ月間熟成させていた熟成庫の湿った香りがしたり、ミルクをぎゅっと濃縮して旨みを閉じこめたような香りがしたり・・・・。フランスの山からやってきたんだなぁという匂いです。 今回お届けするコンテはただのコンテではありません。「PETITE社」という造り手さんのチーズを「St.ANTOINEの要塞」という場所の特別の熟成庫で美味しく熟成されたコンテです。その会社のものはパリの一流チーズ商も手に入れるために必死に買い付けをするという、密かに業界では引く手あまたのコンテだそうです。 ふつう食べるとナッツのような風味を感じるチーズなのですが、長期熟成もさせたコンテはアミノ酸の結晶が所々に見られて旨みが十分に楽しめる味の深〜いチーズとなっています。 |
スティルトン |
イギリスの誇る素晴らしいブルーチーズです。 ブルーチーズの青カビは固まる前のミルクの中に故意に青カビを入れ、チーズの熟成と共に内側からどんどん増えていきます(自然に青カビを発生させるブルーチーズも世の中にはあるようですが)。チーズの中の青カビが脂肪分を分解してあの独特の匂いと舌を刺すようなピリッとした刺激を作り出すといわれています。 スティルトンはイギリス(イングランド)中部のレスターシャー、ダービーシャー、ノッティンガムシャーでのみ製造されています。製造しているのもほんの数社(確か7社だったか・・・)。これもトラディショナル・チェダー同様、昔ながらの製法を固く守って作られています。 ゴルゴンゾーラ(イタリア)、ロックフォール(フランス)と並び、世界3大ブルーチーズのひとつで、アイボリー色のチーズに毛細血管のように繊細に入り込んでいる青カビの様子は私は実に美しい!といつも感心しながら食べています。一般的にブルーチーズは塩分が強いので塩辛いとされています。たしかに塩分を感じますが、美味しいスティルトンはミルクの甘みがまず口に広がり、カビの刺激と塩分ときれいに調和がとれているものです。 イギリスではスティルトンには甘口のポートワインと合わせるようです。イギリス人の紳士は食後に(男性だけで)スティルトンとポートを舐めるように飲むのが楽しみだとか。 もちろんフルボディーの赤ワインとの相性もばっちりです。そしてワインだけでなく、薄くスライスしたバゲットやクラッカーにスティルトンを塗り、その上にハチミツをたらりと垂らして食べてみては如何でしょうか?今まで体験したことのない見事なマリアージュかもしれません!
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