今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
テティージャ |
見事なまでに「おっぱい」の形をしています。だから名前はテティージャ(=おっぱい)。 表面はちょっと濃いめのクリーム色(黄色に近い)なのですが、チーズの中は濃いアイボリー色。ちょっと濃いお乳色という感じでしょうか。 しなっと柔らかい食感で少しやわらかい酸味が感じられます。そしてこのチーズには熟成したようなしっかりとしたチーズの味というよりはまだまだミルクに近いようなほの甘い味わいが強く残っています。 口の中に入れて噛まずにしばらくころがしていたいような・・・そんな、優しい甘みがとても懐かしい気分になります。 スペイン北西部のガリシア地方が産地です。(ポルトガルの上に位置するあたり) ガリシア地方は降雨量が多くあり、豊かな牧草地も広がるスペインでは最も牛の飼育に向いた地域。きっと美味しい牧草をたくさん食べた牛が美味しいミルクをたくさん出して、テティージャになるのでしょう。とても素直で優しい味わいです。 そのままでも大変美味しいですが、少し熱を加えると溶けてとてもよくのびるのでピザトーストなど朝食やスナック用にも使えます。 ワインは軽くてフルーティーな白ワインが一番合うのではないでしょうか。これからの軽やかな春の季節にピッタリのワインとチーズの組み合わせをお楽しみ下さい。 |
シャビシュー・デュ・ポワトゥ |
山羊のミルクで作るチーズを「シェーブル」といいます。山羊乳はその性質上、チーズにしても真っ白い色をしていて(牛乳のチーズは黄色がかったアイボリー色になります)、ミルクを固めるのに使う乳酸菌の量も多いのでほのかに酸味が感じられます。
フランスでシェーブルチーズがたくさん作られている地域は、古城巡りなどの風光明媚さが売りのロワール河流域地方です。その昔、遠くはアラビアから北アフリカ、イベリア半島を征服しながら進軍してきたアラブ人(サラセン人)が8世紀にこの地でフランク王国と熾烈な攻防戦をくりひろげました。その際、アラブ人は進軍する軍隊とともに家畜として山羊をたくさん連れてきていて、乳を搾ったりあるいは肉を食べたりと貴重な食料源としていました。さて732年の「トゥール、ポワチエの戦い」でサラセン軍が破れてしまい彼らは後退していくのですが、その時に連れてきていた山羊を置いて一目散に逃げ帰った、ということでこの地方には山羊が残されたのです。 その忘れ形見の山羊たちの末裔が今、フランス一のシェーブルチーズの産地でたくさん暮らしているというわけです。 シェーブルチーズはその製法のため組織がもろく仕上がってしまいます。そのためあまり大きいサイズのチーズはありませんが、小ぶりながらもユニークな形のものが多いのです。バトン型、ピラミッド型、おにぎり型、お椀型などなどあり今回のシャビシュー・デ・ポワトーは樽栓の形です。 そしてもう一つの特徴としてフレッシュなうちは水分が多くて酸味があること。口に入れるとまず感じるのは酸味。ちょっとヨーグルトのようなニュアンスの乳酸菌から来る酸味です。そして熟成すると徐々に水分が抜けてチーズが締まってきます。すると酸味が弱まって旨みが現れます。この旨みがシェーブルチーズ独特の山羊の旨みとでも言いましょうか、癖になると病みつきになるような旨みなのです。 シャビシュー・デ・ポワトーに関して言えば、味わいはミルクの甘みがかなり特徴的に感じられますし、チーズを口に入れたときの舌触りがスムースできめの細かさが食感として楽しめます。デリケートな感じで素直に「美味しい」と感じるでしょう。BR> ワインは酸味の効いたロワール地方の白ワインはもちろんですが、熟れた果実の味のある南の白ワインでも合うでしょう。わりと守備範囲の広いシェーブルチーズだと思います。 チーズはそのまま食べても美味しいですが、変化を付けるために軽く白胡椒をミルでおろしてエキストラ・バージンオリーブオイルを少しかけてみてもいいでしょう。 |
ブリー・ド・ムラン |
パリ近郊のブリー地区出身の有名なブリー・ド・モー、クロミエなどと共に、ブリー3兄弟の中の「次男坊」とされているチーズです。 ブリー・ド・モーよりはやや小さめのチーズですが、洋食のミート皿くらいの直径(27センチくらい)あります。こちらは「ムラン」という村のブリーチーズです。 長男のブリー・ド・モーや三男のクロミエに比べると、同じ白カビタイプでありながらやや白カビの付き方が少ないというか、茶色っぽい地肌が見えているというか、ようするに真っ白な感じではありません。匂いも白カビ特有の「マッシュルーム」のような香りよりは、少しアンモニアっぽい匂い(強い味のチーズに良くある匂い)がします。 匂いから想像できるように、味わいの方も個性的です。白カビチーズの、とりわけブリーチーズの特徴でもある優しいクリーミーな味わいではなく、やや塩気が強くしっかりとした濃い味わいです。そして時にはピリっと刺激的な味もすることがあります。ただ、熟成がそれほど進んでいないチーズ(チーズの断面中央部にチョーク状の芯が残っている状態)ですと、やや酸味も感じ風味もそれほど強くはありません。 優しいチーズかと思いきや、やんちゃな味わいのブリー・ド・ムランはまさに個性的な次男坊的な性格がそのまま現れているように思います。 ワインも白ワインよりはタンニン(渋味)が少しある赤ワインのほうがあわせやすいでしょう。そう、ちょっと大人っぽい演出やチーズやワインの通に食べてもらうにはちょっと面白いチーズかもしれません。
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