今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
クロミエ |
チーズのまわりに白カビが覆ってあり、その白カビによってチーズ内のタンパク質をうま味成分に変化させているのです。カビを食べるということはちょっと抵抗がありますが、もちろん人体には難の害もないカビなのでどうぞ安心してお召し上がりください。 クーロミエというのはパリ近郊のブリー地区にある町の名前。ブリー地区といえばブリーチーズが作られる場所で、例えば「ブリー・ド・モー」といえばモーという町のブリーチーズというわけです。そしてこの「クーロミエ」もブリーチーズの仲間で、ブリーと同じような作られ方をしています。 ブリー3兄弟の中では一番サイズが小さいこともあり、三男坊的な存在です。 白カビタイプのチーズは熟成が進むとだんだん優しいミルクの香りや味が、ハムのようなまったりとした濃い味に変化していきます。ものによってはチーズの中身がトロトロになり、艶めかしいような匂いを放ちます。しかしながら「クーロミエ」はどちらかといえば穏やかに熟成するタイプ。ミルクの旨みや濃い味わいはありますが強烈なインパクトはないので、ワインの味も損ねずにワインとともに楽しむにはちょうどいいチーズ。普通の赤ワインをもうひとランク上の味に変化させてしまう力を持ったチーズです。 いろんな白カビタイプのチーズがある中で、ちょっと目立ちにくい存在ではありますがじんわりとおいしいこのチーズは私は最も好きにチーズの一つです。 |
ボーフォール |
チーズのプリンスです。
「王子」と呼ばれるチーズはいったいどんなチーズでしょう。ニックネームから想像するとまるでこじんまりとした可愛らしいチーズのような雰囲気もありますが、このチーズはひとつが45キロ以上もある大きなチーズです。 故郷はフランスのサヴォワ地方。アルプス山脈の山深い地域で冬になると雪で閉ざされてしまうために、冬の保存食として大型のハードタイプのチーズが昔からたくさん作られていました。現在では冬はスキーリゾートもたくさんあり、また夏はアルプスの素晴らしい景色と空気を楽しむ観光客で賑わう、観光産業も盛んな地方でもあります。 雪が溶けて春になったら、牛たちを麓の村から山の上へと生えている草を食べながらだんだん登っていきます。春の若草、そして夏の高山植物は牛たちにとって栄養もあり、また香りの高い美味しいミルクを産み出します。そんなミルクから作られるのです。 特にフランスのAOC(原産地呼称統制)という法律で「殺菌をしない全乳」を使用することが義務づけられているので、この手のハードタイプのチーズの中では最もリッチな味わいに仕上がっています。 リッチなのは味だけではありません。香りも素晴らしいです。本格的なチーズの匂いといったら普通は古漬けのような、あるいはアンモニアの匂いが少し混ざったような「腐」のイメージが強いかと思いますが、このボーフォールの香りとは、果物のようなナッツのような「華」やかなメジャーなイメージなのです。 ワインと同じで冷蔵庫から出してきたばかりでは素晴らしい香りも味もまだ閉じてしまって感じることができません。30分前には冷蔵庫から出して室温に戻しておきましょう。そしてゆっくりじっくり味わいながら奥の深い味を噛みしめてみてください。 |
ニュイ・ドール |
ワイン好きにはたまらない・・・でもチーズ初心者にはおそろしい・・・それがウオッシュタイプ。 ウオッシュタイプというのはチーズを熟成させているときに、塩水や地酒などでチーズの表面を洗う作業をして作られるチーズ。中世の修道院でこの製法が確立されたとされていて、冷蔵庫のない昔はこうしてチーズの表面を殺菌していたと思われます。 ウオッシュタイプのチーズの特徴として表面がネバネバとしていることがあげられます。このネバネバ、納豆菌と親戚関係くらいの間柄である「リネンス菌」というものが付いていて、この菌がチーズを美味しくしているのです。チーズを美味しくしているのは良いんだけれど、この菌によって鼻が曲がるような強烈な匂いがします。よく古漬けとかくさやとかの匂いと比較されるほど。 鼻をつまんで一口食べると、味はひょっとしたら白カビタイプより食べやすくて優しいかもしれませんよ。 フランスには修道院から修道院と伝わったウオッシュタイプのチーズが各地に存在しています。その中でも銘醸ワイン産地としてしられるブルゴーニュ地方産のものは種類が豊富です。 それは昔から修道院やその周辺の農家で造り伝えられたきたものもあれば、素晴らしいワインとのマリアージュを楽しむために最近誕生したものもあります。 「ニュイ・ドール」はブルゴーニュ地方でもとりわけ上質な赤ワインを産み出す畑が集中する『コート・ド・ニュイ地区』にあるチーズメーカーが開発した匂いの強いウオッシュチーズです。 どっしりとボディの強い、それでいて繊細なニュアンスを持つワインに上手く合うような味に仕上がっています。 チーズの表面はかなり活発なリネンス菌の影響でベトベトと粘っていますし、匂いもかなり強烈です。しかしチーズの中身はとろけ出すような熟成はしなくて、どちらかと言えばムッチリと弾力があります。そして味わいはそれほど個性が強くありません。むしろ穏やかで優しく整った味わいで、どなたが食べても安心できる、そんな味です。ミルクの甘みと後味にちょっとだけナッツの風味が漂います。 それでもちょっと匂いが苦手、というかたは遠慮無く外皮を取り除いて中身だけを食べてみてください。そのまま食べても美味しいですし、少し熱を加えて溶かしてみてもチーズフォンデュのような香ばしさが出てきてまた美味しさが倍増します。 そして是非ともブルゴーニュ産のピノノワール種のワインと合わせてみていただきたいです。(違う国のピノノワール種との相性も面白いかもしれません)
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