今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
アボンダンス |
チーズの名前は聞き慣れない物が多いですが、それにしてもこの「アボンダンス」という名前もなかなかユニークな名前だと思いませんか? このチーズはフランスとスイスの国境付近、フランスのサヴォワ地方の山奥で作られているチーズです。この地方固有の牛で「アボンダンス牛」という種類の牛がいます。その名前がダイレクトにチーズに使われているってわけです。(この地方の地名にもあります) この地方、冬はスキーなどで訪れる観光客、夏は夏山を楽しむ観光客でにぎわう観光をメインの産業としている地方です。しかしそれは近代に入ってからのこと。昔は冬になってしまうと雪に閉ざされてしまう土地なので、夏の間にアルプスの山に放牧した牛から長期熟成タイプのチーズをどっさりと作っておきます。そしてそれは冬の貴重なタンパク源としていました。 一つが20キロほどもある大きなチーズなのですが、一つ一つを熟成中にていねいに塩水をしみこませた布で拭く作業をしています。そうすることによって表面にはオレンジ色っぽい固い外皮が出来てくるのです。表面を拭いていくことにより、ウオッシュタイプのチーズのようなちょっとお漬け物のような匂いを発しています。 そして表面も心なしか他のハードタイプのチーズよりはベタベタとした感じがしています。ラクレットというスイスの有名なチーズに似ているような感触です。チーズの中身の方はしっとりとした目の詰まった身で濃いアイボリー色をしています。ナッツのような香りが楽しめるはずです。 最低3ヶ月は熟成をさせるのでチーズの味も芳醇で個性的な味わいを持つ、なかなかオツなお味に仕上がっています。アミノ酸の旨みよいはもっとミルクが熟れた感じの熟成をしているので、ワインは少し癖のある赤ワインのほうが合いそうな気がします。 1年中で一番美味しい時期は夏に山に放牧をした牛から絞ったミルクで作ったチーズ。それは秋から冬にかけて市場に出回ります。今回お届けできるのは多分春から初夏にかけてアルプスの野山に咲いた牧草やハーブを食べた牛のミルクから作られたチーズですので、やや優しい味わいに仕上がっているでしょう。 |
ルブロション |
個人的なことを言えば、このチーズは私の最も好きなチーズのひとつです。 このチーズはモルビエよりは少し南に下がったスイスとの国境付近のフランスのサヴォワ地方で作られるセミハードチーズです。 一番品質の良いチーズ向きのお乳は夏草を食べているときのだそうです。しかし牛は夏の暑さに弱く、暑いとストレスから搾乳量が減ります。 数年前にこのチーズの故郷を訪ねましたが、夏場はアルプスの山の牧場に牛を放牧して、自然に生える牧草やハーブや高山植物を食べさせて、とても栄養分の高いミルク(香りも豊かな)を絞って作っていました。高度の高い山の上の牧場、そして栄養価の高い夏草をゆっくりと野放しで食べさせて絞るお乳から作るチーズが美味しくないはずがありません。その牧場からは勇壮な「モンブラン」が遠くに見えていました。 そんな「アルプスの少女ハイジ」の世界をみてしまったからでしょうか、現地で食べたあのルブロションの味が素晴らしかったからでしょうか、ルブロションに対しては特別な感情を抱いてしまってもしかたがないのです。 ウオッシュとセミハードの中間のようなルブロションは、上品で優しいミルクの味が素晴らしいです。製造の過程で一度だけ塩水でチーズの表面を洗います。ですからウオッシュタイプと分類されることもありますが、ウオッシュタイプ特有のベトベトとした感じや古漬けの様な匂いも全くないので、セミハードタイプのチーズと認識をした方がいいでしょう。 1年中チーズショップで売られているチーズではありますが、今の時期のものは初夏から夏にかけてのアルプスの大自然の中でゆっくりと草を食んだ牛たちのミルクから作った、最も美味しいチーズのはず。食べればそのミルクの芳しさや甘さをダイレクトに感じることができるでしょう。 |
ブルー・ド・ジェックス |
青カビタイプのチーズ(通称、ブルーチーズ)とはチーズの中に青カビを故意に入れて、その青カビによってチーズのタンパク質を旨み成分に分解し、おいしくなるチーズです。 しかしながら、青カビチーズは「臭い」「しょっぱい」「きもちわる」とかなり嫌われ者になっています。「ナチュラルチーズは好き。 ブルーチーズを除いてはね・・」という声もかなりよく聞こえてきます。やはりミカンやお餅のまわりについた青カビはだれも喜んで食べたりしないから、どうしても避けたくなってしまうのでしょうね。 もちろん、この青カビも無害です。薬にあるペニシリンも青カビから作っているように、カビがすべて悪者ってわけではないのです。 しかし最近では日本でもイタリアのゴルゴンゾーラとかフランスのロックフォールとか風味の強いブルーチーズも料理に使ったり、またワインのお供に楽しんだりという人も増え、百貨店はもちろんスーパーなどでも見かけるようになりました。 でもブルーチーズに馴染みのない人が闇雲に買ってしまうと失敗も多いタイプのチーズだと言うことは覚えておいてください。 ブルーチーズでもマイルドな風味の食べやすいものがあります。このブルー・ド・ジェックスはとても穏やかな風味のチーズ。グリーンがかった青カビがムッチリとしたチーズの中に入り込んでいますが、塩味もそれほど強くないですし青カビのピリッとした独特の味や匂いも弱めで食べやすいチーズです。 ほんのりナッツのような味と香りがするのも特徴です。 それでもちょっと匂いが苦手、というかたはチーズをオーブントースターなどで溶かして食べると驚くほど食べやすくなります。 バゲットや食パンにチーズを薄くスライスしたものをのせて焼いてみてください。もしくは茹でたり蒸かしたりしたジャガイモの上にチーズをのせてオーブンで軽く炙ってみても良いでしょう。 これで気の利いた一品として召し上がることもできます。
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