今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
ピコドン |
今、まさに旬の山羊乳のチーズ。山羊は春先に子供を産み、それから夏にかけてお乳を出します。自然の摂理からいうと、今がまさに旬なわけです。(最近ではミルクを冷凍保存したりして、1年中チーズを作れるようになっていますが) なんとも奇妙な響きのチーズです。フランスやイタリアの伝統的に造られているチーズの名前はたいていはその地方名や街や村の名前が付いていることが多いのですが、この「ピコドン」は違います。 ローヌ河流域で作られている山羊乳製のこのチーズ。できたては真っ白で酸味もあり爽やかです。しかし熟成とともに水分が抜けていってどんどん硬くしまってきます。チーズの回りには青とか白とか灰色のカビも生えてきます。そして2ヶ月近くも熟成させるとコチコチに硬くなります。 それほどまでに熟成したチーズは「ピリッと」辛いそうです。そう、このピリッと辛いことをフランス語では「ピカン」といい、チーズの名前であるピコドンとはここからきているそうです。ではこのチーズはシェーブルだけれど辛いのか?? 大丈夫です。普通に出回っているピコドンはせいぜい熟成1ヶ月以内。チーズの表面には自然に生えるカビが少し見られますが、カットしてみるとチーズの中身は薄いアイボリー色から白です。食べてみるとほんのり酸味とともに甘いミルクの香りもするはず。 それと同時に南の太陽が育てた美味しい牧草を食べているため、チーズの味が非常に濃いのです。シェーブル特有の匂いがまったりと口の中に広がるでしょう。まだシェーブルを食べ慣れていない人にとってはちょっと奇異な味と感じてしまうかもしれません。もしそう感じて食べるのが辛ければ、是非ハチミツを添えて食べてみてください。 |
ペコリーノ・トスカーノ |
「ペコリーノ」とはイタリアの羊乳で作るチーズのこと。 イタリアの中部や南部は牛よりも羊の飼育がさかんでチーズも羊乳のチーズが大半です。「ペコリーノ・○○」と○○のところに土地の名前が入り、「ペコリーノ・トスカーノ」もトスカーナ地方の羊のチーズという意味になります。 イタリアの最古のチーズは「ペコリーノ・ロマーノ」でこちらはローマの羊のチーズということになります。 羊の乳は牛や山羊の乳に比べてたんぱく質や脂肪分が多く含まれているため、濃厚で芳醇なチーズを産み出します。羊は牛に比べると体も小さくまたミルクを搾乳できる期間も短いのですが、牛ほど広大な牧草地を必要としないので丘陵地で起伏の激しいトスカーナ地方のようなところでの飼育がさかんです。 イタリアのチーズはフランスのチーズに比べて見た目が朴訥としていて田舎臭い・・・なんて言われています。ペコリーノチーズは見た目も味もちょっぴり野暮ったいかも。カットした表面も何となくざらついていてなめらかさがありませんし、室温においておくとだんだんじんわりと汗(油分が浮き出る)をかいたようになってきます。 20日ほど熟成させたものから市場にでますが、それくらいのものはまだ色も白っぽくフレッシュな甘みがあります。今回お届けするものは4ヶ月ほど熟成をさせてもので、たまご色っぽい黄色で、フレッシュな甘みではなく奥行きのあるチーズらしい甘い旨みによるコクがあります。濃厚な羊乳からまったりとした味を想像しますが、しつこくない優しい素朴なハードタイプのチーズです。 もっともっと熟成をさせるとチーズも固くなり、旨みももっと凝縮して濃くなるそうですが、4ヶ月くらいのものが一番食べやすくてワインにも合いやすいように思います。 イタリアの各地にある「ペコリーノ」チーズですが、それぞれに味わいが違っています。塩辛いもの、田舎っぽい素朴な味わいのあるもの、ひねたような味があるもの・・・などなどですが、中でもペコリーノ・トスカーノが一番洗練されているかもしれません。 どうせならば同郷のサンジョヴェーゼ種主体の赤ワインとマリアージュさせてみたいものです。(ちなみに今回のAとCのワインはバッチリの相性だと思います。) |
マロワール |
フランスでも最も北に位置する「ティエラシェ地方」で作られているウオッシュタイプのチーズです。 ウオッシュタイプというのはチーズを熟成させているときに、塩水や地酒などでチーズの表面を洗う作業をして作られるチーズ。中世の修道院でこの製法が確立されたとされていて、冷蔵庫のない昔はこうしてチーズの表面を殺菌していたと思われます。 ウオッシュタイプのチーズの特徴として表面がネバネバとしていることがあげられます。このネバネバ、納豆菌と親戚関係くらいの間柄である「リネンス菌」というものが付いていて、この菌がチーズを美味しくしているのです。チーズを美味しくしているのは良いんだけれど、この菌によって鼻が曲がるような強烈な匂いがします。よく古漬けとかくさやとかの匂いと比較されるほど。 マロワールもベルギー国境までわずか30キロの「マロワール町」に7世紀に作られた大修道院で作られるようになったウオッシュタイプのチーズでかなりの歴史があります。歴史を経て修道院から周辺の村の農家に作り方が伝えられて今に至っているというわけです。 ウオッシュタイプの中でも一番と言っていいくらい強烈な臭いがします。ちょっとでもチーズの表面に手が触れようものならしばらくはその臭いが取れないくらいの臭気。しかもネバネバ加減も半端ではありません。すさまじい外見ではありますが、チーズをカットしてみると中身はかなり穏やかな様相。 味は濃厚というよりは程良い食べやすさ。ミルクの旨みと甘みがほんのりと漂います。臭いのきつい外皮を取り除いて食べれば朝食に出しても大丈夫(?)かも。そのまま食べるよりはパンにのせて軽くオーブントースターで焼くと、より生っぽい臭いや風味が消し去られてとても食べやすくなります。現地ではマロワールがフィリングになったタルトも存在するとか。 最近では125gとか250gくらいの箱入りのマロワールがスーパーや百貨店でも見かけられるようになりました。クラブでお届けするのは一つが600g近くもある「ソルベ」というかなり大型のサイズ。小さなサイズのマロワールより苦みなどの雑味がすくないマイルドな味わいです。 臭い匂いにひるむことなく、優しい味をお楽しみください。
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