今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
アベイ・ド・ベロック |
ピレネーの山で生産される羊乳製のチーズ(ブルビ)です。 「アベイ」とは修道院の意味。もともとはこの地域にあるベロック修道院で生産されていたチーズだったとのことで、この名前が付いています。 ピレネー山脈では夏になると羊の高地放牧が行われ、美味しいハードタイプのチーズをたくさん生産します。その中でも「オッソー・イラティ」という名前のついたチーズはAOCに認定されています。「アベイ・ド・ベロック」も言ってみれば「オッソー・イラティ」と同じようなチーズで修道院が模倣して作り始めたとのことです。 羊乳製のチーズはその乳に含まれる豊富なタンパク質と脂肪分でこってりとした芳醇な味わいが特徴で、糖分は入っていないのですが「甘み」が感じられると表現されます。それだけミルクの味わいが濃いチーズでクセが無くて食べやすいと評判です。 土地の人たちはチーズにブラックチェリーのジャムを添えておやつに食べるのが定番だそうですが、ブラックチェリーのジャム以外にもハチミツやブルーベリーのジャムなどを添えて食べてみても良いかもしれません。また違ったチーズの楽しみ方が体験できると思います。 ワインは是非、南仏の赤ワインを。タンニン(渋味)の強いワインでもチーズ由来の脂肪分(まったり感)で甘みと果実味を引き立ててくれます。 |
キュレ・ナンテ |
フランスで一番長い距離流れている河、ロワール河の下流の都市ナントでつくられ始めたチーズです。その歴史は非常に古くて1794年(フランス革命のころですね!)にナントの街に逃げてきた(あるいは移り住んだ?)司祭がつくったのが始まりだそうです。 チーズ名である「キュレ」とは司祭という意味で「ナンテ」はもちろんナントのことです。修道院で作っていたチーズということですね。チーズの表面を洗いながら熟成させていく「ウオッシュタイプ」のチーズになりますが。 ウオッシュタイプのチーズは表面がベトベトとしていて匂いも納豆とか濡れ雑巾のような、あまり表現としてはうれしくない匂いがするのが特徴です。この匂いだけを嗅ぐとまさかこれを食べるの?と思ってしまうこともありますが、「キュレ・ナンテ」はあまり匂いは激しくありません。 多少ベタベタはしていますが、カットしてみるとムッチリとしたふくよかなチーズが現れます。そして匂いを嗅ぐと優しいミルクの味と一緒にピーナッツのようなちょっと香ばしいナッツのにおいもしてきます。味も優しく、いくらでも食べられそうなくらい穏やかです。 このチーズ、カットしてそのまま食べるのも良いですが、皮の部分だけを取り除いて茹でたジャガイモにのせて軽くオーブンで溶かして食べると、簡単なグラタン料理が一品出来上がります。ピザ用のシュレッドチーズを使ったグラタンに比べると、グッとヨーロピアンなひと皿になるはず! |
ブルー・デ・コース |
けっこう風味の強いブルーチーズです。 世界3大ブルーチーズのひとつでもあるあの有名なロックフォールの産地と限りなく近い地方で作られています。 両チーズともこの地方にある自然にできた石灰岩の洞窟で数ヶ月熟成をします。この洞窟はブルーチーズには最適な熟成条件を兼ね備えているので、おいしいチーズを作るのには必要不可欠なものです。これらのチーズはこの地方の洞窟で熟成をさせないといけないという法律まであるくらいですから。 ロックフォールが羊乳で作るのにたいしてブルー・デ・コースは牛乳で作ります。牛乳は無殺菌乳で脱脂をしない、いわゆる「全乳」でつくられるため、他の牛乳製のチーズより(例えばクラブでもかつてご紹介をしたフルムダンベールやブルー・ド・オーヴェルニュなど)甘みや濃厚さが若干多く感じられるでしょう。 フレッシュタイプのチーズ以外は食べる前30分から1時間前には冷蔵庫から出して、室温に戻しておくことが鉄則です。それはワインと同じで冷やすと独特の香りや味わいが閉じてしまって美味しさが半減してしまうからです。 しかし全乳で作られるチーズというのは脂肪分を全く取り除いていないわけですから脂肪分が高いです。ですから室温においておくとすぐに柔らかくなってしまいます。暑い夏場はあまり長いこと(2時間も3時間も)室温に置いておくことはオススメできません。 ロックフォール同様、かなりピリッとした風味も強いし塩辛さも相当なもの。渋みの強い(タンニンの多い)赤ワインと合わせて楽しみましょう。赤ワインの渋みと合わさるとチーズもワインも驚くほど甘みを感じることができます。もちろん甘口のワインとの相性も驚くほど良いです。暑い夏には冷たく冷やしたデザートワイン(甘口ワイン)とブルー・デ・コースをチビチビとやるのもちょっと素敵です。 ワインがダメ・・とおっしゃるかたにはハチミツをチーズに添えて召し上がってみてください。辛みや塩辛さが甘さと混じり合うと角が取れて、何とも不思議なハーモニーを奏で始めます。 そのまま食べるのがとてもつらいようでしたら、サラダのトッピングやオムレツに少量混ぜてとお料理のワンポイントに使ってみてください。熱を加えると風味も和らぎ、またそのまま食べるよりは他の材料と混ぜてしまうことにより塩分や風味もかなり薄まります。ちょっとブルーチーズ風味があるだけでも、いつもの卵焼きが洋風に変わりワインのつまみにもなるかもしれません。
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