今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
モッツァレラ・ヴァッカ |
イタリアはナポリのあたりが原産のフレッシュタイプのチーズです。
イタリア料理店に行けばトマトとモッツァレラチーズのサラダ(カプレーゼ)がすっかり定番になっているのでチーズの好きな人は一度は食べたことがあるチーズだと思います。それにイタリアではピザに使っているので熱を加えたらとろーりと糸を引くほど柔らかく溶けます。 モチモチとした食感とサッパリとしてほんのりとミルクの甘みを感じることができるモッツァレラチーズは、イタリア人にとっては日本人のお豆腐のような感覚の食品。できたてが一番おいしく、せいぜい賞味期限も1週間。日本に輸入するのには特別の包装で空輸されるので多少は賞味期限が延びるものの、それでも1日でも早く食べた方がそれだけおいしいチーズに出会えるとのこと。 手のこぶし大の真っ白なチーズをカットすると、じわっとジューシーなホエー(乳清と呼ばれるチーズを作る際に生じる糖分の多い液体)が出てくるものほど美味しいモッツァレラだとか。こういうモッツァレラを作るのにも技術が必要で本場イタリア産のものを凌ぐ国産品にはなかなか出会えません。 モッツァレラは元来水牛乳で作っていました。しかし水牛の数が需要に追いつけない(需要が急激に伸びた)ため、牛乳製のモッツァレラが広い範囲でまたたくさん作られるようになりました。水牛乳製のものを「ブーファラ」とよび、牛乳製のものを「ヴァッカ」と呼びます。また牛乳製のものを「フィオーレ・ド・ラッテ」(ミルクの花)とも言ったりしているそうです。 この2種類のミルクで作ったモッツァレラには違いがあります。水牛乳は牛乳に比べたら乳脂肪分が3倍以上もあるので、とても甘くてジューシーなモッツァレラを作ることができます。食べ比べればその味の差は歴然。 モッツアァレラチーズは熟成をさせないタイプのチーズですので、お手もとに渡ったらなるべく早くに食べきってしまった方がよいでしょう。食べ方、楽しみ方はいろいろありますが、まずカットしたてをパクッとつまんでみてください。ジュわっとチーズに閉じこめてある水分が口の中で広がって、ほんのり甘みが広がるはず。 チーズを輪切りにしてお皿に並べてエクストラバージンオリーブオイルをたらりと回しかけるだけの、サラダのような食べ方もとてもおいしいですし、そこにトマト、バジルの葉を加えれば「カプレーゼ」ができあがりです。(かるく白胡椒を挽いても) もちろん牛乳製のモッツァレラ・ヴァッカも十分に美味しいですが、もっと美味しい本物のモッツァレラを!と思ったらモッツァレラ・ブーファラをご注文ください(今回はオプションで扱っています)。 |
ブリアサヴァラン |
ミルク(牛乳)にクリームを添加して作るので乳脂肪分が通常のチーズよりも高く、非常にクリーミーなのが特徴です。このようなタイプのチーズを「ダブルクリーム(乳脂肪分が60〜75%まで)」とか「トリプルクリーム(75%以上)」と呼んでいて、ブリヤ・サヴァランは乳脂肪分が75%なので「トリプルクリーム」のチーズです。 「ブリヤ・サヴァラン」というのはフランスに昔実存した美食家の名前。その美食家が生み出したチーズ・・・というわけではなくて、約60年前にフランスはパリのチーズ屋さんが美食家のにあやかってこのチーズに命名したとのこと。伝統的な昔ながらのチーズではなく、フランスの中では比較的新しいチーズです。 チーズの姿は真っ白で、できたての初々しさを感じる、まさにフレッシュタイプのチーズです。フレッシュタイプのチーズといえば、「フロマージュブラン」に代表されるようにヨーグルトより多少クリーミーで酸味が少ない・・・というサッパリとしたチーズを想像しますが、このブリヤ・サヴァランは乳脂肪分が高いこともあり、爽やかな酸味もほのかに感じるものの、それよりもまったりとしたバターのようなコクが印象的です。フレッシュタイプですので、熟成したチーズにありがちな「匂い」もなく、チーズを食べているというより、何かクリームを使ったデザートを食べているような・・・・。そんなリッチな味わいのチーズです。 チーズにはワイン。というのが当たり前の組み合わせですが、ブリヤ・サヴァランにはその他の飲み物でも楽しめそうな可能性を秘めています。 朝食にちょこっと「たんぱく源」として食べる場合(かなり贅沢なたんぱく源だが)ならば、軽く焼いたトーストとコーヒーに。 夏の休日のブランチによく冷やしたフルーティーな白ワインかロゼワインとともに。 のんびりと過ごせる午後のお茶の時間、香りの高い紅茶のお茶うけに。 そしてもちろん赤ワイン(私の好みはミディアムボディで余りどっしりとしていない軽やかな赤ワイン)のワインの甘さを引き出してくれるお相手に。ちょっと渋めの赤ワインの渋みを解消してくれる役目をになってくれるかもしれません。 ひょっとしたらこの頃はやりの芳醇なタイプの日本酒(古酒にも)にも合うかもしれません。 それだけ守備範囲が広く、いろんな楽しみ方がありそうなチーズです。 ぜひいろんな飲み物で楽しんでみてください。 |
フィオーレ・サルド |
イタリアの長靴のさきっぽの部分にある島は「シチリア島」。そして同じ地中海のシチリア島よりも地図上で上にある、ちょうどローマの向かい側に浮かんでいる島が「サルディニア島」。 この島はフランス領のコルシカ島の真下に位置して、羊の頭数が島の人口よりずっと多いという羊の島です。昔から羊の乳で作るチーズがいくつも存在していて、すべてが「羊のチーズ」という大ざっぱな名前で呼ばれていました。 地中海の沿岸のヨーロッパは牛よりも羊が多く飼われています。気候などがきっと羊向きなのでしょうね。羊のミルクは牛のミルクに比べると脂肪分、たんぱく質などが多くてまったりとした濃厚な味わいが特徴です。そのミルクからつくるチーズも当然味わいの濃いものができあがります。 イタリアでは羊のチーズのことを「ペコリーノ」と呼び、有名なものではローマ近郊で作られる「ペコリーノ・ロマーノ」やトスカーナ地方で作られる「ペコリーノ・トスカーノ」とかあります。そしてサルディニア島にも「ペコリーノ・サルド」という羊のチーズが存在するのですが、このフィオーレ・サルドとは違うものです。 「サルディニアの花」と名付けられたこのチーズはDOPという法律で守られています。無殺菌の羊乳で作られています。羊乳特有のくさみ、甘みの中に、ちょっと刺激的なツンとした辛さを感じることができますが、それほどクセのあるチーズではありません。熟成期間もそれほど長くない(せいぜい2ヶ月以内)なのでハードタイプにしてはサッパリと食べられます。 島育ちのチーズらしく少し粗野で野暮ったい風貌と味ですが、赤ワインと合わせるとその野暮ったさがお洒落に変化しそう。あまり骨太の赤ワインより、ミディアムボディの柔らかいワイン(そしてワインもちょっと田舎っぽい方がいいかもしれない)と相性がよさそうです。
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