今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
パヴェ・オウ・エルブ |
チーズの周りにエストラゴンがたっぷりまぶしてあるシェーブルタイプのチーズです。 シェーブルタイプとは山羊の乳で作ったチーズのこと。山羊の乳は牛乳に比べて母乳に近い成分なので赤ちゃんやお年寄りには無理なく消化吸収できるという利点があるそうです。しかし牛乳に比べると若干くせがあるため、「臭い」とか「くどい」とか敬遠する人も多いのも確かです。 山羊乳のチーズの多くは乳酸菌を多く使って乳を固めているため、若いチーズは酸味が感じられます。それがフレッシュで爽やかに感じられれば、アナタはシェーブルファンといえるのではないでしょうか。そのフレッシュ感を大いにウリにしているのがこの「パヴェ・オ・セルブ」かもしれません。 さわやかな酸味そして少しクリームを添加しているために感じる豊かな風味。口に入れるとふわっとチーズが溶けて口の中に甘みが広がる感じが楽しめます。山羊乳特有の「臭み」もこのクリーミーな風味でかなり抑えられているし、チーズの周りのエストラゴンが完全に臭み消しの役目を果たしています。 伝統的なチーズというよりは最近開発された新しいタイプのチーズですが、現代人の嗜好にあったフレッシュ&クリーミーをかなえて成功しているチーズの一つだと思います。 |
モルビエ |
スイスとの国境を接するフランスのフランシュ・コンテ地方(ジュラ)のセミハードタイプのチーズです。
この地方ではコンテというフランスでは一番消費量が多くてポピュラーなハードタイプのチーズの産地でもありますが、モルビエはこのコンテを作るときに残ったカード(ミルクを酵素などで固めた状態のもの)で作ったいわば残り物で作ったチーズです。 昔はまず夕方に残ったカードを型に入れ、その表面に虫よけにススをかけておき、翌日の朝に残ったカードをその上に足してひとつのチーズを作ったことから、チーズの真ん中に黒いラインができたのです。今ではコンテの残り物で作ってはいませんが、昔ながらのトレードマークの黒いラインはわざとつけているそうです。 ススは食べて苦くないか?どういうわけか苦くないのです。チーズの味も損なっていません。何のススなんでしょうね。 味のほうは親分のコンテほど熟成をさせないからでしょうか、ミルクの甘さがずいぶん残っていてとても食べやすいセミハードタイプのチーズですが、決して薄っぺらい味ではなくチーズの臭さ、熟成のまろやかさも感じられる満足感が十分にあるチーズです。 |
サルヴァ |
このチーズの名前を聞いたことありますか? まだ日本に輸入されてから日が浅いのですが、昨年ゆうこチーズクラブで紹介したらものすごく反響が大きかったので、再びお届けします。 このチーズの故郷は北イタリアのロンバルディア地方(州都がミラノ)の山の中。 山深いこの地方では四季を通じて昔から様々なチーズが作られていました。夏になると牛たちを麓の村から山に放牧しに出かけます。山にある放牧地には香りの良い草や美味しい花が自生しているから、それらの草花を食べた牛から絞ったミルクは栄養価が高く、チーズにすると風味の濃い美味しいチーズができあがるのです。 さてこのサルヴァというチーズは夏の放牧した牛のミルクから作ったチーズではなく、放牧に牛たちを出す前の5月に麓の村の家に残る家族が夏の間に食べるためにまとめて大きめに作られたチーズです。「サルヴァ」という名前はイタリア語で「サルヴァーレ(保存する)」からきています。そういうチーズですのでこの地方としては少し大きめで、見た目は朴訥としています。 表面は木の肌のようなゴワゴワとした黒っぽい茶色。所々に白や黄色、グレーのカビが生えています。表面からは湿った洞窟や蔵のようなカビとほこりっぽい空間の匂いが立ち上ります。決して「美味しそう」という感じではありません。 見た目だけでなく味わいも素朴そのもの。でも味の方は素朴でありながらもしっかりとミルクの甘さは感じられます。チーズの中心部分は熟成がなかなか行き届かないのでボソボソとした食感とほのかな酸味が感じられますが、表面に近い部分はねっとりとしてコクがあります。 これぞ山の日常使いのチーズ。こういうチーズが昔から各家庭に常備され、貴重なタンパク源として日々大切に食べられていたのでしょう。 食べるときの注意として、このチーズの外皮(皮の部分)は食べてもちっとも美味しくないので是非切り落としてください。 ワインとの相性ですが、チーズそのものがそれほど個性的な強さを持っていないので、優しい赤ワインとかコクのある白ワインが合うのではないでしょうか。白ワインはもちろん辛口で!
|