今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
コンテ・エクストラ |
コンテは、フランスではグラタンなどのチーズを使ったお料理に欠かせない料理用のチーズとして、またワインとともに楽しむ食卓用のチーズとして万能選手のチーズです。 ひとつが50Lちかくもある大きなチーズで、チーズの歴史も2000年近くあると言われています。 ハードタイプのチーズは、保存性を良くするためにチーズ中の水分をかなり少なくした熟成期間も長いチーズ(今回のものは15カ月も熟成しています)。 このコンテの故郷もアルプスの山中でスイスとの国境付近です。冬の保存食として夏にアルプスの山中に放牧した牛からとったミルクで作られてきました。 よく食べ慣れているプロセスチーズと比べると旨みとともに甘みや苦みなども感じられますが、そこがナチュラルチーズとプロセスチーズの違いで、チーズの味わいが複雑です。味が単一な感じがしません。 単一なのは味ばかりではありません。匂いを嗅いでみてください。何とチーズの芳しい香りがすることか!時にはチーズを数ヶ月間熟成させていた熟成庫の湿った香りがしたり、ミルクをぎゅっと濃縮して旨みを閉じこめたような香りがしたり・・・・。フランスの山からやってきたんだなぁという匂いです。 今回お届けするコンテはただのコンテではありません。「PETITE社」という造り手さんのチーズを「St.ANTOINEの要塞」という場所の特別の熟成庫で美味しく熟成されたコンテです。その会社のものはパリの一流チーズ商も手に入れるために必死に買い付けをするという、密かに業界では引く手あまたのコンテだそうです。 ふつう食べるとナッツのような風味を感じるチーズなのですが、15ヶ月の熟成もさせたコンテはアミノ酸の結晶が所々に見られて旨みが十分に楽しめる味の深〜いチーズとなっています。 |
アッペンツェラー・ブラックラベル |
スイス、しかもアノアルプスの少女ハイジの故郷の「マイエンフェルト」にとても近いアッペンツェル地方の山で作られている、スイスでも指折りのハードタイプのチーズです。 このチーズのユニークなところは地元で造られる白ワインにスパイスを入れて(入れるスパイスは作るヒトによってレシピが違うそうです)、その液体を浸した布でチーズの表面を洗うんだそうです。ハードタイプのチーズだけれど、ウオッシュタイプの行程もふんでいるってことになります。 ですからチーズは少し古漬けっぽい臭いがします。 どうもこの臭い匂いのせいで、「風味の強いハードタイプのチーズ」と思われてしまうのですが、食べてみると意外と香ばしくて食べやすいです。 通常手に入れやすい銀のラベルの熟成が3ヶ月程度のものは、しっとりと目の詰まっている身で優しいミルクの甘みを十分に残しています。そしてハードタイプ特有のナッティな香ばしさが楽しめます。味のアクセントとしてちょっとピリッと辛みを感じます。 その銀ラベルのアッペンツェラーより、熟成が長くなるに連れてラベルの色も「金」から「黒」に河rます。今回お届けする「黒(ブラック)ラベル」は6ヶ月以上の熟成を経たチーズ。熟成が進むにつれてチーズの味が濃く旨みも増してきて、いよいよ匂いもお漬け物に近づいてきます。 白ワインはもちろん、赤ワイン、そして日本茶なんかともいいかも??しれませんね。 |
アズィアーゴ・ストラベッキオ |
イタリアのチーズは日本ではまだ良く知られていないものがたっくさんあります。 「アズィアーゴ」はイタリア国内ではそこそこ有名なチーズ。日常的に食べられられる手頃なチーズという位置づけだそうです。日常的に食べられる、ということですから味はサッパリとしていて、クセもそれほど無いものなのですが、「アズィアーゴ・ストラベッキオ」になるとちょっと違います。 「アズィアーゴ」というチーズの故郷はもともとはイタリアのヴェネト州北部の標高が1000m以上の山の中だったそうです。厳しい冬の保存食として造られていたチーズですから、大きくて固くて長期熟成が出来るようなものでした。 けれど近年はもっと短い熟成期間で商品になり、やや柔らかいセミハードタイプで優しい味に仕上げた「アズィアーゴ・プレッサート」というチーズが多く作られるようになり、市場でもこのタイプが優位を占めているそうです。その柔らかいタイプのアズィアーゴもパンにはさんで食べたり、朝食に食べたりするにはちょうど良くて大変美味しいチーズです。 ですが特に山の中の小さな村では今でも昔ながらの製法で昔と同じような固くて長期熟成をさせるタイプの「アズィアーゴ」も小規模ながら造られています。この固いタイプのアズィアーゴを「アズィアーゴ・ダッレーヴォ」と呼んでいますが、さらに長期熟成させたものを「ストラベッキオ」(大変古いという意味)と呼びます。 12ヶ月も熟成させたチーズはしっとりとした弾力性はほとんどなく、アミノ酸の結晶が所々に見られどちらかというと「ボロッ」とした食感です。香りも熟成により複雑で様々な要素を持つ香りになり、味は旨みはもちろんですが、ハチミツのような香ばしいような甘いような何とも不思議な深みのある味になっています。 ソフトタイプのチーズと違って、噛みしめていると口の中に徐々に美味しい香りと味がじんわりと広がっていく感じが「するめ」に似た熟成製品独特の楽しみかもしれません。 ワインもいいけれど、熱燗や冷やの日本酒でもいいかもしれません。
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