今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
サルヴァ |
このチーズの名前を聞いたことありますか? 実はわたしも最近知り合った(?)チーズなのです。 このチーズの故郷は北イタリアのロンバルディア地方(州都がミラノ)の山の中。 山深いこの地方では四季を通じて昔から様々なチーズが作られていました。夏になると牛たちを麓の村から山に放牧しに出かけます。山にある放牧地には香りの良い草や美味しい花が自生しているから、それらの草花を食べた牛から絞ったミルクは栄養価が高く、チーズにすると風味の濃い美味しいチーズができあがるのです。 さてこのサルヴァというチーズは夏の放牧した牛のミルクから作ったチーズではなく、放牧に牛たちを出す前の5月に麓の村の家に残る家族が夏の間に食べるためにまとめて大きめに作られたチーズです。「サルヴァ」という名前はイタリア語で「サルヴァーレ(保存する)」からきています。そういうチーズですのでこの地方としては少し大きめで、見た目は朴訥としています。 表面は木の肌のようなゴワゴワとした黒っぽい茶色。所々に白や黄色、グレーのカビが生えています。表面からは湿った洞窟や蔵のようなカビとほこりっぽい空間の匂いが立ち上ります。決して「美味しそう」という感じではありません。 見た目だけでなく味わいも素朴そのもの。でも味の方は素朴でありながらもしっかりとミルクの甘さは感じられます。チーズの中心部分は熟成がなかなか行き届かないのでボソボソとした食感とほのかな酸味が感じられますが、表面に近い部分はねっとりとしてコクがあります。 これぞ山の日常使いのチーズ。こういうチーズが昔から各家庭に常備され、貴重なタンパク源として日々大切に食べられていたのでしょう。 食べるときの注意として、このチーズの外皮(皮の部分)は食べてもちっとも美味しくないので是非切り落としてください。 ワインとの相性ですが、チーズそのものがそれほど個性的な強さを持っていないので、優しい赤ワインとかコクのある白ワインが合うのではないでしょうか。白ワインはもちろん辛口で! |
ポン・レヴェック |
フランスはノルマンディ地方を代表するチーズです。 ウオッシュタイプとはチーズを熟成させるときに塩水などで洗い、まわりにリネンス菌という細菌を繁殖させることにより、薄オレンジ色でベタベタとした湿っぽさがチーズの表面を覆います。このベタベタはあの納豆菌と通じるものがあります。納豆菌と同様に、リネンス菌がチーズのタンパク質を美味しい成分に変化させているのです。 いままでゆうこチーズクラブでご紹介してきたウオッシュタイプのチーズは表面がベタベタのものが多かったのですが、今回のポンレヴェックはかさかさと乾いています。そして表面の色もオレンジ色というよりは若干オレンジ色がかった白です。 何故このようにできばえに違いが出来るかというと、熟成中に表面を洗う回数によって違ってくるのです。ポンレヴェックは生産する会社によっても多少違いはあるものの、どちらかというと塩水で洗う回数が少な目。だからそんなにべたべたとした感じにしあがらず、しかもオレンジ色が薄く、匂いもマイルドなのです。 そんな優しいウオッシュタイプのチーズではありますが、チーズの味は本格的。ノルマンディ地方の豊かな牧草を食べた牛の乳から作るチーズはとても濃厚で、またミルクの甘さや柔らかい香りが生きています。とても食べやすいのですが、骨太い味わい。ミルクの質の良さを感じてしまいます。 今回お届けするメーカーは「無殺菌乳」を使って作っているので、特に味わいは濃厚。ミルクに存在する様々な微生物がチーズの発酵に多いに活躍して複雑で奥の深い味を産み出しているのです。 ノルマンディ地方といえば、あのカマンベールチーズの故郷でもあります。この地域は年間を通じて降雨量が多く豊かな緑の牧草地が広がり「ミルクの油田」とも言われている地域。緯度が高いのでぶどうの生産はできず、代わりにりんごの木がたくさん植わっています。そのりんごから作る発泡酒のシードルや蒸留酒のカルバドスなどの生産地としても大変有名です。 もしリンゴのお酒をお手持ちならば、合わせてみては如何でしょうか? |
フルム・ド・モンブリゾン |
フランスにはAOC(原産地呼称統制)という制度があり、食品の伝統的な製法を守り、地域性の保存やその食品(農産物)の素性の確かさを保証するシステムがあります。
有名なところではワイン。ワインにはたくさんの原産地呼称があり、その名称を見ただけでだいたいの味の特徴やスタイルを推測することができます。 現在チーズには42個のAOCのチーズがあるのですが、最近、「フルム・ダンベール」と同じAOCで括られていた「フルム・ド・モンブリゾン」が独立したAOCになりました。 このフルム・ド・モンブリゾンは見た目の形はフルムダンベールにそっくり。それもそのはずで二つのチーズの生産地は山をはさんだ西側と東側ということで、気候や風土、そして文化はほとんど同じ。 ただ作り方が微妙に違うため、味にかなりの差が出ています! フルム・ダンベールもかなり優しい味わいのブルーチーズとご紹介していますが、フルム・ド・モンブリゾンはさらに青かびの入り方が少ないのです。そしてチーズもややアイボリー色が濃く、杉の木の上で熟成をさせるので表面もオレンジ色が強いです。やや香ばしい感じがするのではないでしょうか。 どことなくイギリスのスティルトンにも似ているような味わいのブルーチーズですので、普通のワインとの相性も良いですが、ポート(ポルトガルの甘口の赤ワイン)と一緒に食べるのも楽しいでしょう。
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