今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
リコッタ |
イタリアのフレッシュタイプのチーズです。
イタリアもフランスに並びナチュラルチーズの種類が多く、500種類以上あるとも言われています。
フレッシュタイプのチーズというのは、ミルクに乳酸菌や凝乳酵素を加えて固めてから水分(ホエー)だけを排水した熟成をさせていないチーズ。熟成をさせないでフレッシュなまま食べることを目的にしているので、賞味期限も短く早く食べた方がおいしいチーズです。チーズというよりは酸味の少ないヨーグルトのような色や食感。 「リコッタ」チーズはフレッシュタイプのチーズの中でもちょっと特殊な作られ方をしているので、フレッシュチーズのなかでは甘みが強くなっています。これはミルクを酵素などで固めて排水されるホエーという水分にクリームを加えて新たにチーズを作る、言ってみれば普通だったら捨ててしまうホエーを再利用して作られるチーズなのです。ホエーには乳糖という甘みの成分が多く含まれていて、そのために「リコッタ」は砂糖を加えていないのにほんのり甘いのです。 そう、「リコッタ」というこの名前はイタリア語で“2度煮た”という意味。一度目は普通のチーズのために加熱して取り出したホエーのもう一度加熱して「リコッタ」チーズをつくるので、この名前が付いたようです。 イタリアでは特に南イタリアでよく利用されているようで、そのまま食べたり、料理に使ったり、またお菓子にと変幻自在に使われているようです。このまま食べるなら、私はジャムやハチミツを添えていただいたり、フルーツにかけて食べたりと朝食の一品に、もしくはデザートに食べてみることをオススメします。うちの娘はチーズが大嫌いですが、このリコッタはおやつ感覚で大変喜んで食べてくれます。もちろん栄養的にもチーズそのものなのですから、良質のタンパク質と吸収されやすいカルシウムが豊富に含まれています。 ワインに合わせてちょっと気取って食べるチーズという感じではありませんが、日常使いには非常に便利なチーズであると言えるでしょう。 |
ピコドン |
今、まさに旬の山羊乳のチーズ。山羊は春先に子供を産み、それから夏にかけてお乳を出します。自然の摂理からいうと、今がまさに旬なわけです。(最近ではミルクを冷凍保存したりして、1年中チーズを作れるようになっていますが) なんとも奇妙な響きのチーズです。フランスやイタリアの伝統的に造られているチーズの名前はたいていはその地方名や街や村の名前が付いていることが多いのですが、この「ピコドン」は違います。 ローヌ河流域で作られている山羊乳製のこのチーズ。できたては真っ白で酸味もあり爽やかです。しかし熟成とともに水分が抜けていってどんどん硬くしまってきます。チーズの回りには青とか白とか灰色のカビも生えてきます。そして2ヶ月近くも熟成させるとコチコチに硬くなります。 それほどまでに熟成したチーズは「ピリッと」辛いそうです。そう、このピリッと辛いことをフランス語では「ピカン」といい、チーズの名前であるピコドンとはここからきているそうです。ではこのチーズはシェーブルだけれど辛いのか?? 大丈夫です。普通に出回っているピコドンはせいぜい熟成1ヶ月以内。チーズの表面には自然に生えるカビが少し見られますが、カットしてみるとチーズの中身は薄いアイボリー色から白です。食べてみるとほんのり酸味とともに甘いミルクの香りもするはず。 それと同時に南の太陽が育てた美味しい牧草を食べているため、チーズの味が非常に濃いのです。シェーブル特有の匂いがまったりと口の中に広がるでしょう。まだシェーブルを食べ慣れていない人にとってはちょっと奇異な味と感じてしまうかもしれません。もしそう感じて食べるのが辛ければ、是非ハチミツを添えて食べてみてください。 それと是非ローヌ地方のワインと合わせてみましょう。ヴィオニエ種でつくる上質な白ワインとの相性は申し分ありません(今回はオプションでラングドック地方のヴィオニエ種のワインをご紹介しています)。そして味が濃く、やや熟成が進んでいるピコドンには赤ワインでも大丈夫。グルナッシュ種、シラー種などのワインと合わせてみると、チーズの突出したピリッとした辛さや山羊臭さをワインが丸く包み込んでくれます。これぞ、ワインとチーズのマリアージュです! |
フルール・ド・ビエール |
チーズの外皮を洗って熟成させる「ウオッシュタイプ」といわれるチーズです。匂いが強く、強烈な個性を持つタイプといわれていますが、洗う液体によって風味も微妙に変わってきます。 フルール・ド・ビエールの故郷はフランスのアルザス地方。アルザス地方といえばドイツと国境を接していてドイツ文化の影響を受けている地域。町並みもドイツ風、郷土料理もドイツ風、ワインの瓶もドイツ風の細長いもの・・・と、生活慣習などもドイツっぽいところです。ワインの産地でもありますが、ビールの消費もかなりのものです。 そんなアルザスには「マンステール」という超がつくくらい有名なウオッシュタイプのチーズが存在します。マンステールは塩水でチーズの表面を洗って仕上げたチーズですが、このフルール・ド・ビエールはマンステールと同じチーズをビールで洗って仕上げました。 ですからウオッシュタイプ独特のねばねばとして匂いの強い表面を見ただけではよく分からないのですが、カットしたものを口に入れてゆっくりと味わってみるとほのかにビール酵母の酵母菌の香りが口の中から鼻に抜けていくのが分かると思います。あぁ、なるほど、ビールで洗っているんだ・・・と、チーズの名が示すことに偽りはない!と確信できる瞬間です。 マンステール同様、チーズは見た目の印象よりはかなり優しくて食べやすい味です。しかも芳醇な濃いミルクの味わいが楽しめます。ビールはもちろんのこと、アルザス地方のワインとの相性も抜群です。
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