今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
ヴァランセ |
あのナポレオンがエジプト遠征の失敗直後にこのチーズを見て、ピラミッド型の先端部分をちょん切ってしまった・・・という逸話がある有名なチーズです。 フランスで最も距離の長い河のロワール河流域の中流から中上流域ではシェーブルチーズがたくさん生産されています。その中でも形がひときわユニークなヴァランセ。ピラミッドの形といえば先のとがった四角錐ですが、その尖り部分が無い台形のような形。そしてまわりには黒い灰がまぶされています。 なぜ灰がチーズのまわりに付けられているかというと、2つくらい理由があるようです。ひとつめはできて間もないフレッシュなチーズは水分がまだ多いので、程良く湿り気を吸い取るために灰をまぶすということ、もうひとつは酸味の強いチーズ(酸性)をアルカリ性である灰をまぶすことによって中和するため、ということ。どちらも後付された理由のようで、「昔から灰をまぶしてきたから」というのが現場の人の本当の所の理由だそうです。 チーズのまわりの灰の色がまだ黒々としているようだったら、そのチーズはまだ熟成がほとんどされていないフレッシュなもの。チーズの中はしっとりとしていてホイップクリームを固めたような感じの食感。味わいは酸味が一番強く、ミルク風味も感じることができます。 灰の色がグレーや薄いブルーのカビに覆われてあまり目立たなくなっているようだったら、そのチーズは熟成が進んでいる状態。チーズの水分が程良く抜けてきていてチーズの中身もきめが細かくなっています。食べるとほのかな酸味の中に熟成した旨みやその他の複雑な味が同居していてコクが感じられるようになります。 そしてさらに熟成が進むと、水分が抜けて固く固くなってきます。するとチーズは栗のような食感に近くなってきて、食べるとほくほくとしてどこかナッツのような木の実の味わいも感じるようになります。風味や塩味も強くなり、いわゆる「通」が好むような味となります。 熟成の段階によって合わせるワインも変わってきますが、若いシェーブルには辛口でフルーティーな白ワイン(特にロワール河流域で作られる白ワインならベスト)との相性が良く、熟成が進んできたらミディアムボティの軽めの赤ワインなどがいいでしょう。 |
サンマルセラン・アフィネ |
「サン・マルセラン」という名前はこれまたフランスのリヨンよりちょっと南の町の名前。 そして後ろにくっついている「アフィネ」という言葉は「熟成した」という意味。 通常は余り熟成させないフレッシュな状態で売られているチーズです。 そう、このチーズはそんなフレッシュなサン・マルセランをある程度熟成させ、出荷されたチーズ。 「熟成」っていうのは、チーズの中にある微生物(乳酸菌など)とか人為的に付けるカビ(白カビとか青カビ)によって、チーズのタンパク質を旨み成分に変化させること。 サン・マルセランはチーズの中に潜んでいる乳酸菌などによって徐々にチーズ中のタンパク質を変化させ、そしてチーズの身も柔らかく(トロトロ)に変化します。 だからこのチーズ、カップに入った状態でお届けします。 トロトロになるとチーズの風味は強くなり、また塩分もきつく感じます。 しかしこのような状態こそ、チーズの醍醐味ともいえます。 チーズに慣れた、そしてワインの大好きな人はこういうチーズを好む傾向にあるようです。 赤ワインとの相性は恐ろしいほどいいのです!!もう病みつきの味。 チーズにはまだ不慣れ・・・とおっしゃる人も、一度は試してみて欲しいです! 熟成によってトロトロにとろけるタイプのチーズの中では、風味はマイルドですし、食べきりサイズというのも魅力です。 ちょっとばかり勇気を出してトライしてみませんか? |
イディアサバル |
スペインのチーズはまだまだ知られているものは少ないです。もっとも有名なものは「マンチェゴ」という羊乳のチーズなのですが、このチーズも羊乳で作られるハードタイプのチーズです。 羊乳は牛乳に比べると乳脂肪分、乳糖、タンパク質などすべての栄養成分が多く含まれています。そのためチーズに加工すると芳醇でリッチな味わいのものができるのです。 イディアサバルはバスク地方(スペインとフランスの国境付近)で伝統的に作られてきたチーズです。ピレネー山脈をはさんだフランス側では「オッソー・イラティー」というAOCのチーズがありますが、このピレネー山脈を含むバスク地方では昔から良質の羊のミルクを利用したチーズ造りが盛んだったようです。 羊乳と聞くと「クセがあるんじゃないの?」と敬遠される方もいらっしゃるようですが、全く獣臭ささは感じられず、牛乳製のハードタイプのチーズと食べた感じはあまり違わないです。むしろ牛乳製のものに比べると甘みや旨みが強くふくよかな味わいだという印象を持つことができるでしょう。 特に今回のイディアサバルは燻製をかけてあるので香ばしい燻香が食べ慣れた「スモークチーズ」を連想させ、より好感を持って食べることができると思います。また特徴的な味わいとして、羊乳を固めるときに使う凝乳酵素の作用で若干ピリッとした刺激味があるのですが、それも程良いアクセントとなり遠いスペインの異国情緒を感じるスパイスになるでしょう。 赤ワインはもちろん、フュメ香(燻したような香り)のあるソーヴィニヨン・ブラン種のワインとの相性が楽しみです。
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