今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
カマンベール・ド・ノルマンディ |
誰でも知っている「カマンベール」。でもただのカマンベールではありません。 元もとカマンベールチーズはフランスのノルマンディ地方というパリより北西の緑の豊かな地方で作られていました。(もちろん今でも作られています。)白カビを回りに吹き付けて作る「白カビタイプ」のチーズですが、この白カビチーズというのはフランスでは8世紀頃からブリーチーズが作られていて、フランスならではの製法でした。カマンベールもフランス革命時にパリ近郊からイギリスに向けて逃げていた修道僧が、逃亡の道中にたまたま身を寄せていたノルマンディ地方のカマンベール村の農家の奥さんにブリーチーズの作り方を伝授したことから、作られ始めたとか。 近代になってからこのチーズの美味しさが内外に知れ渡って、世界の各地でコピー商品が作られはじめました。日本でもいろんなメーカーや牧場が「カマンベール」の名前でチーズを売り出しています。見た目は同じような白カビタイプのチーズでも、乳牛の種類、吹き付けるカビも違い、そして作り方などまるで違うので全然別物のチーズがあちらこちらでできあがってしまいました。そうなると本家本元のカマンベールの値打ちまで下がってきてしまうわけです。 そこで1980年にAOCというフランスの法律で作る地域を限定したり、乳牛の種類を限定したり、大きさや伝統にのっとった作り方を厳しく決めたりして、昔から伝わるオリジナルなカマンベールを保護することにしました。そしてその法律にのっとって作られたカマンベールは「カマンベール・ド・ノルマンディ」という正式名称がつき、これぞ本物のカマンベールチーズということになりました。 そして今回お届けするのも、もちろん「カマンベール・ド・ノルマンディ」で、そんじょそこらのカマンベールとはひと味もふた味も違うはずです。まず味が「濃い」。まだ白カビが真っ白に生えているような若い状態ではそれほどでもありませんが、熟成が進むにつれてチーズの匂いがきつくなりチーズの味も「なんじゃこれ〜?!」というくらい濃いです。 それは多分、無殺菌乳でチーズを作っているからかもしれません。「カマンベール・ド・ノルマンディ」は必ず無殺菌の牛乳で作らなければなりません。殺菌をすることによって悪い菌も死んでしまいますが、チーズになったら豊かな風味を醸し出すために必要な善良な菌までも殺してしまうこともあります。牛乳の中に潜んでいる様々な菌が充分に作用して、複雑で奥行きのある風味を作り出している無殺菌乳製のチーズならではの味が楽しめます。 近くにもしも殺菌乳で作るカマンベールが売っていたら、是非食べ比べてみてください。その差がはっきりと分かるでしょう。 |
ミモレット・ヴィエイユ |
きれいなオレンジ色のセミハードタイプのチーズ。まるで夕張メロンのような色と形です。 もともとはオランダのチーズ。17世紀の一時期に外国製品の輸入を禁止した時代あり、その時にフランス国内で生産されるようになったそうです。そのため形はオランダの代表的なチーズであるエダムチーズとそっくりで、作り方もほとんど同じ。 フランスでの主な生産地はベルギーとの国境付近のフランドル地方です。 きれいなオレンジ色はアナトーという着色料で色づけされているから。若いうちは薄いオレンジ色ですがだんだんと茶色っぽい渋いオレンジ色に変化していきます。 日本では18ヶ月とか24ヶ月も熟成をしてかなり水分が抜けて固くなり、また旨み成分がぎゅっと詰まった状態のミモレットが人気。なぜならタンパク質が長い熟成期間のうちにしっかりとアミノ酸の結晶に変わり、旨味がうんと増すから。こちらはまるでスルメをかじる感覚でたべられる「酒のつまみ系」のチーズになっています。カラスミのような珍味系の味わいです。 日本人は昔から発酵食品に囲まれて生活してきたということもあり、味覚の中でいう「旨み」にはかなり敏感。そして誰もがこの旨みを好みます。チーズなのにどこか懐かしいような安心できる味わいを見いだし、子供から大人まで受け入れられやすいのです。 ワインばかりではなく、日本酒や焼酎など日本のお酒との相性も是非ためしてみたい、そんなチーズです。 |
トゥルー・デ・クリュ |
ふつうウオッシュタイプのチーズって200g位の大きなものばかりですが、このチーズはちょっと試したい人にもぴったりのプチサイズです。 しかも、このチーズはあの「エポワス」(注:チーズの王様とも称せられるブルゴーニュ地方の超有名ウオッシュタイプのチーズ)を製造するチーズメーカーが作っているのです。サイズや熟成の工程が多少違っているので「エポワス」と言う名前は名乗れないのです。 チーズを熟成させるときに塩水などで洗い、まわりにリネンス菌という細菌を繁殖させることにより、薄オレンジ色でベタベタとした湿っぽさがチーズの表面を覆います。このベタベタはあの納豆菌と通じるものがあります。納豆菌と同様に、リネンス菌がチーズのタンパク質を美味しい成分に変化させているのです。 匂いもかなり個性的で、お漬物のようなひねた香りが特徴です。はっきり言って「臭い」匂い。でも匂いのわりには味は優しいので、匂いで「うっ」っと来たら鼻をつまんで食べてみてください。芳醇なミルクのコクが口中に広がるでしょう。 そのうち、この匂いがクセになってきて匂いをかがないとチーズが食べた気にならいほど虜になることでしょう。 赤ワインならあまり軽くてフルーティーなものはワインの良さを殺してしまいます。どうぞタンニン(渋み)が十分にあるボティーのしっかりとしたワインと一緒に召し上がってください。
|