今月取り上げるチーズとワインをよりやさしくご説明をいたします。 チーズの詳しいプロフィールとかは「ゆうこのピックアップの該当ページ」をご参照ください。 ここでは実際に食べるときに即して、わかりやすく書いてみたいと思っています。 |
クロタン・ド・シャヴィニョル |
小さなおにぎり形のシェーブルタイプのチーズです。
シェーブルタイプというのは山羊のミルクで作ったチーズのこと。山羊は冬に仔山羊を出産するのでミルクが出るのは冬から(1月頃)7月初めまでです。ですから今が山羊のチーズの旬の季節。 シェーブルチーズは乳酸菌によってミルクを固めるため(凝乳酵素も使いますが)、フレッシュなうちはヨーグルトのように酸味が強く感じられます。酸味だけでなくミルクの甘い香りと味も真っ白なチーズからはほんのりと感じることができます。チーズは柔らかくて決してクリーミーではありません。 クロタン・ド・シャヴィニョルの故郷はフランスのど真ん中の中央山塊から大西洋に流れているロワール河の流域にある「シャヴィニョル村」(フランスのど真ん中)で伝統的に作られているチーズ。名前の由来はその形が粘土でできたランプ(クロ)に形が似ているからとか、馬や牛の糞みたいだから・・・とかいわれています。 若いうちは真っ白で柔らかく酸味のあります。今回お届けするクロタンはフレ(若い熟成)のものとアフィネ(熟成をさせたタイプ)をそれぞれお届けします。熟成が程良く進むと表面に青とか白いカビが生えてきて、日本人の我々にとってはちょっと「おぞましい」姿になります。 熟成が進むとチーズ内の水分が徐々に抜けていき、チーズがしまってきます。しまってくると柔らかかったものが少しずつ固くなり、そして酸味が抜けてきて熟成による旨み成分が増しコクが出てきます。牛乳製のチーズの熟成したときの旨みとはまたちょっと違う、山羊乳特有の熟成の旨みというものが楽しめます。 それにしてもこの「おぞましい」表面のカビはどうしたらいいのでしょうか?気になる方はカビの部分を削り取って中身だけを召し上がってください。けれどもカビも味のうち!ということでこのまま食べても人体に特に影響はないようです。わたしはぱくぱく食べてしまいます。 今回ご紹介の白ワイン「サンセール」はこのクロタンの故郷の「シャヴィニョル村」のほんのお隣の「サンセール村」で作られる有名でかつ高品質な白ワインです。抜けるような酸味が特徴の素晴らしいワインですが、同じ土地から生まれるワインとチーズということで合わないわけがありません。 クロタンといえばサンセールなのです。 |
サンネクテール |
外側は褐色、オレンジ色の薄い皮で(でも本来はもっと自然にはえるカビでボウボウなのですが、日本に来るときには綺麗にされています)、中はムッチリとした、ちょっと蒲鉾のような感触のチーズです。 フランスのオーヴェルニュ地方という山深いところで作られ、前記のブリー・ド・モーに比べればなんとなく素朴、というか田舎っぺ。 お味のほうも牛乳の風味がそのままチーズになった・・・という感じで、実直な優しい味です。言い換えればひねりのないチーズ。 セミハードタイプといってハードタイプよりは柔らかいけれど、保存性もある程度ある山岳地方の家庭用チーズといったところでしょうか。 チーズというものもワインと一緒で、うまく熟成がなされているものとそうでないものでは、味に多いに違いが出てしまうもの。このサンネクテール、田舎っぽい風味が裏目に出て雑味や苦み、ちょっと鼻を突くような匂いや、かび臭いカーブの匂いがきつくなっているものもあります。 まさに「一期一会」で、素直に育っているチーズに出会えたらラッキー、ってことなんですが、果たしてこの度お届けするチーズはどうでしょうね。 素直に熟成したサンネクテールからはきっと木の実のような風味や、きのこっぽいちょっと湿った香り、そしてミルクの甘い香りがすることでしょう。 |
ポン・レヴェック |
フランスはノルマンディ地方を代表するチーズです。 ウオッシュタイプとはチーズを熟成させるときに塩水などで洗い、まわりにリネンス菌という細菌を繁殖させることにより、薄オレンジ色でベタベタとした湿っぽさがチーズの表面を覆います。このベタベタはあの納豆菌と通じるものがあります。納豆菌と同様に、リネンス菌がチーズのタンパク質を美味しい成分に変化させているのです。 いままでゆうこチーズクラブでご紹介してきたウオッシュタイプのチーズは表面がベタベタのものが多かったのですが、今回のポンレヴェックはかさかさと乾いています。そして表面の色もオレンジ色というよりは若干オレンジ色がかった白です。 何故このようにできばえに違いが出来るかというと、熟成中に表面を洗う回数によって違ってくるのです。ポンレヴェックは生産する会社によっても多少違いはあるものの、どちらかというと塩水で洗う回数が少な目。だからそんなにべたべたとした感じにしあがらず、しかもオレンジ色が薄く、匂いもマイルドなのです。 そんな優しいウオッシュタイプのチーズではありますが、チーズの味は本格的。ノルマンディ地方の豊かな牧草を食べた牛の乳から作るチーズはとても濃厚で、またミルクの甘さや柔らかい香りが生きています。とても食べやすいのですが、骨太い味わい。ミルクの質の良さを感じてしまいます。 今回お届けするメーカーは「無殺菌乳」を使って作っているので、特に味わいは濃厚。ミルクに存在する様々な微生物がチーズの発酵に多いに活躍して複雑で奥の深い味を産み出しているのです。 ノルマンディ地方といえば、あのカマンベールチーズの故郷でもあります。この地域は年間を通じて降雨量が多く豊かな緑の牧草地が広がり「ミルクの油田」とも言われている地域。緯度が高いのでぶどうの生産はできず、代わりにりんごの木がたくさん植わっています。そのりんごから作る発泡酒のシードルや蒸留酒のカルバドスなどの生産地としても大変有名です。 なかなか普通の酒屋さんでは見かけないノルマンディ産のシードルもご紹介していますので、ノルマンディのチーズとともに味わってみてはいかがでしょうか? |
今月のワイン |
1999 ブルグイユ・キュヴェ・ニュイ・ディヴレス(ブルトン) 1999 Bourgueil Cuvee Nuits d'Ivresse domaine Catherine et Pierre Breton 生産地:生産地:フランス,ロワール川流域トゥーレーヌ地区ブルグイユAOC 生産者:カトリーヌ&ピエール・ブルトン 品 種:カベルネ・フラン100% 価 格:2,900円(税別) シノンおよびブルグイユのアペラシオンで今最も注目されている生産者です。彼らもまた,完全無農薬,有機農法(ビオディナミ)で育てられたぶどうからワインを造っています。伝統的な木樽を用いて醗酵および熟成をしています。そのうえ酸化防止剤(二酸化イオウ)も無添加。清澄および濾過をせずに瓶詰しているのは言うまでもありません。先月の「ラシーヌ」と同様,これまた純粋に自然なワインといえるのでないしょうか。 口当りはソフトなのですが,すさまじい果実の凝縮度を実感できます。それもそのはずで100年近い古木をも含む,たいへん樹齢の古い原料ぶどうを使用しています。 なおワイン名の“ニュイ・ディヴレス”とはフランス語で「陶酔の夜」という意味だそうです。 ワインの美味しい楽しみ方(飲むときのコツ) 飲まれる1時間程度前に開栓してください。 また1日で飲みきれない場合は,コルク栓をして冷蔵庫で保管してください。翌日飲む前に室温にならして(1時間ぐらい前より食卓に立てておく)お楽しみください。 ※酸化防止剤を使用していないため,たいへんデリケートです。ワインセラーが無い場合は冷蔵庫の野菜室で保管してください。 1998 サンセール・レ・モン・ダネ(パスカル・コタ) 1998 Sancerre Les Monts Damnes domaine Pascal Cotat 生産地:フランス,ロワール川流域中央フランス地区サンセールAOC 生産者:パスカル・コタ 品 種:ソーヴィニョン・ブラン100% 価 格:3,800円(税別) サンセールを代表する生産者と言えば,この“コタ”できまりでしょう。長期熟成タイプのサンセールを産出する数少ないドメーヌのひとつです。通常1998年産の白であれば,すでに飲み頃ですが,この「レ・モン・ダネ」は違います。決して1日で飲みきらないでください。2日目が感動的です。その突き抜けるような酸の素晴らしさを体験してみてください。 概して「ブルゴーニュの白」と比較して「ロワールの白」は低く見られがちです。しかしこのクラスを試していただくと評価は一変するのではないでしょうか。 ワインの美味しい楽しみ方(飲むときのコツ) 飲まれる30分程度前に開栓してください。 このワインは,できれば1日で飲みきらずに2日間かけてお飲みいただくとさらに楽しいです(味わいが劇的に変化します)。 1999 シードル・アルジュレット(エリック・ボルドレ) 1999 Sydre Argellette domaine Eric Bordelet 生産地: 生産地:フランス,ノルマンディー地方 生産者:エリック・ボルドレ 品 種:フレカン・ルージュ,ダムロ,ケルメリアン,…(もちろん,すべて「りんご」です) 価 格:1,800円(税別) フランスではぶどう以外の原料からでも醸造酒がいくつか造られています。この「シードル」もその中のひとつです。りんご果汁を醗酵させて造ります。 この“アルジュレット”はボルドレ氏が所有する特別な区画の土壌に植えられたりんご樹から,収穫した最上の果実のみを使用して仕込まれるものです。アルコール度数は4度とやや低めですが,りんごの果肉をそのままほおばったような新鮮なアロマが楽しい1本です。 無農薬・有機農法で栽培されたりんごを使用しています。甘口ではないですが,ほんのり甘みを感じます。 ワインの美味しい楽しみ方(飲むときのコツ) シャンパンと同じ発泡性のワインです。開栓して即おいしいです。 思いきり冷やしてください。5〜8℃ぐらいが適温です。 1日で飲みきれない場合は,冷蔵庫で保管してください。 |