セル・シュール・シェール
Selles-sur-Cher
産地フランス、ロワール河流域
原料山羊乳
乳脂肪分45%
形状底部直径9.5B、高さ2.5〜3B、重さ150gの円錐台。
タイプシェーブルタイプ
季節1年中(旬は春先)
プロフィールロワール河といえばシェーブルチーズの産地。ロワール河の支流であるシェール河の沿岸の「セル・シュール・シェール」という町と同じ名前の付いたこのシェーブルは、一つが150gと程良い大きさである。シェーブルチーズは乳酸菌を使う割合が他のチーズより多いので、熟成が若いうちは酸味が強い。その酸味を和らげるという意味合いもあってポプラの灰と塩を混ぜたものをチーズのまわりに付着させている。
ロワール河流域でシェーブルチーズの生産量が高いのは、8世紀にサラセン人(アラブ人)がスペインからフランスに攻め込んできたときに、共に山羊を大量に連れてきたそうだ。そしてロワール地方でフランスの勢力が優勢になり、やがてサラセン人は後退していったが、連れてきた山羊は置いていかれたそうだ。その山羊の子孫たちが今こうしてシェーブルチーズのためにせっせとお乳を出しているとか・・・。
表面の木炭が適度に湿っているので、カビの自然な繁殖をうながしている。若いうちはチーズの身もややしっとりと柔らかく味は爽やかな酸味を感じるが、熟成して水分が抜けてくると身が引き締まり、チーズのカットしたときの肌理の細かさが非常に印象的。味もコクが増して酸味と甘みのバランスが良くなる。
食べた感想よく聞く話ですが、春先から初夏にかけてがシェーブルの旬です。山羊が子供を産むのが1月〜2月頃、数週間は子山羊だけがミルクを独占しますが、しばらくしたら人間様にも少し分けてもらってチーズ作りをするそうです。
ですから春先には熟成の若いまだしっとりしていて酸味もあるチーズが、しばらくすると乾燥してかちかちになったチーズが市場に出回ります。(カチカチになっているようなものは日本ではほとんどお目にかかりませんね) 今ではシェーブルチーズも1年中作られるようになり(ミルクを冷凍保存したりする技術があるので)、遠く離れた日本でもチーズショップに行けばいつでも買えますが、「旬」の存在を知るとやはりその時期に食べてみたくなりません?私は5月のゴールデンウイーク頃の初夏を思わせる暑い日、つい昨日までは赤ワインばかりだったのにキリッと冷やした辛口の白ワインが飲みたいような日に、お供としてシェーブルがとても食べたくなることがあります。
とくにこのセル・シュール・シェールはしっとりと肌理が細やかで、上品な食べ心地がとても良いです。チーズのサッパリとした爽やかな酸味が辛口の白ワインのキレと非常によく合いますし、形状がカットしやすいのです!(これって結構大事ですよね?いっぺんで全部平らげてしまうならともかく、私のように何日間にも分けてチビチビと食べるものにとっては、保管しやすい形というのは大きなポイントになります)
シェーブルタイプのチーズは(その他のタイプのチーズもですが)熟成の段階によってずいぶん味が変わってきます。セル・シュール・シェールも各段階でいろんな味わいが楽しめます。
若いうちはまわりに付いている灰も黒々としていてチーズもかなり水分が多くてもろいです。そして酸味が強くて爽やかさ、フレッシュさを感じられます。
中くらいの熟成状態は黒い灰を覆うように青っぽいカビがうっすらと生えていて、サイズも若いものに比べると一回り小振りになります。それは熟成中に水分が自然に抜けて、味やチーズの身も締まってきます。酸味は若干残りますが、シェーブルの独特の臭みがコクとなって口中を満たします。程良い甘みもあり味は穏やかです。
いよいよ完熟になるとサイズは縮みきり、表面もカビなのか汚れなのか何だか小汚いみすぼらしい様子です。カットするとかなり固いです。ぎゅっとナイフを入れて切ります。水分が抜けきっていますのでポソポソするような、なにか分厚い干物を頬ばっているような・・・。噛めば噛むほど旨みが口の中で広がり、シェーブルのクセが旨みと一体になってなんとも体験したことのないような味がします。(非常に怪しげな食べ物のようですが、実際、完熟したシェーブルは怪しげな食べ物だと思います)
ちなみに私は表面に青いカビをうっすらとまとった程度の熟成が最も好き。シノンなどロワールの赤ワインにもよくあって(ワインのピーマンっぽい風味といいみたい)、ちょっとマニアックなマリアージュが楽しめます。
合うワインロワール地方の白ワイン。ソーヴィニヨン・ブラン種(例えばプイィ・フュメ)やシュナンブラン種、ミュスカデ種、など独特の酸味がある、キリッとしたワインと。イタリアのワインだったらソアベよりはガヴィと。スパークリングワインとの相性や、辛口の日本酒との相性もなかなかのもの。
合うパンバゲット、全粒粉のパン。




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